「ユーザー体験を根本的に変える」――iOS向けの公式YouTubeアプリが登場

» 2012年09月11日 20時40分 公開
[田中聡ITmedia]
photo おすすめ動画が表示される「ホームフィード」

 Googleが9月11日、iPhoneとiPod touch向けの公式YouTubeアプリをApp Storeで公開した。利用料金は無料。

 YouTube公式アプリ(以下、公式アプリ)では、これまでAppleがiPhoneにプリインストールしていたYouTubeアプリ(以下、従来アプリ)と比べて、いくつかの機能向上が図られている。公式アプリを起動すると「ホームフィード」と呼ばれる画面が現れ、ここにおすすめの動画が表示される。画面左上の設定ボタンをタップするか、画面左端から右へスワイプすると、登録中のチャンネル一覧や、YouTube動画のカテゴリー一覧などが表示される。チャンネルの追加もここから行える。さらに、従来アプリでは対応していなかった、公式ミュージックビデオを視聴できるようになった。

 検索方法も改善し、単語の入力中に、該当する動画やチャンネルの候補を提案してくれるようになった。例えば「ジョジョ」と入力すると「ジョジョの奇妙な冒険」「ジョジョ芸人」「ジョジョ立ち」といったキーワードが候補に出るので、1つのキーワードからさまざまな動画を探しやすくなった。動画の再生中にTwitter、Facebook、Google+に共有することも可能だ(従来アプリもTwitterへの投稿はできた)。

photophotophoto 登録したチャンネルや動画のカテゴリーが一覧表示される(写真=左、中)。チャンネルの追加もできる(写真=右)
photophotophoto 動画の再生画面。動画の評価を加えたり、SNSへ投稿したりできる。「後で見る」に追加すれば、アカウント情報の「後で見る」に登録される
photo こちらは横向きの再生画面

photophotophoto アカウント情報の「履歴」を選ぶと、デバイスを問わず、過去に見たYouTube動画が一覧表示される(写真=左)。検索ボックスにキーワードを入力すると、さまざまな候補を提案してくれる(写真=中)。アカウント情報(写真=右)

 YouTube公式アプリはiPhoneとiPod touch向けだが、iPad向けに最適化したアプリもリリースする予定だ。公式アプリのダウンロードは以下から。

alt

 まもなく発表予定の新しい「iOS 6」では、従来のYouTubeアプリがプリインストールされなくなる見込み。「従来のYouTubeアプリはAppleが開発したもので、(AppleとGoogleが)5年の契約を結んでいた。(2012年は)契約が終了するタイミングでもあった」と、YouTube プロダクト アジア太平洋統括本部長のアダム・スミス氏は話す。今回の公式アプリは、iOS 6や新型iPhoneの登場を見据えての発表だと思われる。ただ、現在のところ公式アプリと従来アプリは共存し、どちらも利用できる。

日本では50%のYouTubeユーザーが携帯端末から利用している

photo アダム・スミス氏

 公式アプリの発表に伴い、スミス氏が、モバイル環境におけるYouTubeの利用動向について説明した。

 YouTubeのサービスが提供されたのは2005年だが、当時はデスクトップPC向けのビデオサービスという位置づけだった。「当時はビデオの解像度が240pと低かったが、ビデオを電話から見ることは簡単なことではなかった。携帯電話の画面も小さく、ネットワークも2Gか、せいぜい3Gだった。当時は動画を携帯電話からストリーミングするというのは、将来の夢のような話だった」とスミス氏は振り返る。

 2007年からはiOSとAndroid向けアプリの提供を開始したほか、Googleはモバイルブラウザ向けのYouTubeサービス(http://m.youtube.com)を開発し、2008年から提供している。「2010年から提供しているHTML5を活用したサービスでは、高速体験をもたらし、多くの携帯電話のブラウザで一貫性(のあるUI)を実現している」(スミス氏)

 スマートフォンが普及している現在は、「Android 4.0/4.1など高度なOSにより、デスクトップPCで楽しまれていたYouTubeの体験が、モバイル端末上で実現できるようになった。GALAXY NEXUSなどのスマートフォンでは720pの動画を視聴できる」とスミス氏は胸を張る。

 GoogleはYouTube上で「TrueView」という広告モデルを提供しており、PCやAndroidアプリなどのほか、今回リリースされたiPhone向け公式アプリにも導入されている。TrueViewでは、動画再生前に広告が再生されるが、視聴者が見たくなければスキップできるのが特徴。スキップされた動画広告に対しては広告料金は発生しないので、広告主にとっては効果的に収益を上げられる。

 2012年初めには、1日あたりのモバイル端末でのYouTube動画の視聴数が1日6億に達し、9月にはYouTubeのモバイルビューが1日あたり10億に達したという。スミス氏によると、世界では25%のユーザーがモバイル端末からYouTubeの動画を視聴しているそうだが、日本ではこの比率が約2倍の50%にも及ぶという。スミス氏は「日本では新しい製品を早いタイミングで取り入れるユーザーが多く、携帯電話の浸透も早かった。また日本人は外で過ごすことが多いので、時間をつぶすために動画を見る人も多かったのではないか」とみている。

 YouTubeの動画はニュースのソースとして使われることも多いという。スミス氏は日本での例として、東日本大震災発生後に、震災や津波の様子を記録した動画が多数アップされたことを挙げ、「市民によるジャーナリズムが実現された」と説明。「モバイル機器で動画をアップできることで、視聴されるコンテンツの質が変わり、さらなる付加価値が生まれる」(同氏)

photophoto 2005年の最新携帯電話といえば、スライドにもあるSamsung端末のようなフィーチャーフォンが主流。ネットワーク環境も含め、携帯で動画のストリーミングを楽しむことは、まだ現実的ではなかった(写真=左)。2007年からiOS向けとAndroid向けにYouTubeアプリが提供されている(写真=右)
photophoto ブラウザを利用したモバイル版YouTubeの開発にも注力している(写真=左)。Android端末では720pの高精細な動画を再生できる(写真=右)
photophoto 視聴者が自由にスキップできる動画広告「TrueView」をYouTubeに導入している(写真=左)。東日本大震災のときに、被災地の様子を伝える動画が多数アップロードされた(写真=右)

 今回提供されたYouTube公式アプリについてスミス氏は、「iPhoneが2007年に発売されて以来、YouTubeのエンジニアが主導で開発した最初のiOS向けアプリ。ユーザー体験を根本的に変えるもの。ぜひ今日から使ってほしい」と話した。モバイル端末でもPC並みのユーザー体験を得られるようになったYouTube。同氏は「デバイスを問わず一貫的な体験ができること」を重要視するとともに、「モバイル環境でビデオを作成、視聴するというトレンドを、iOSがさらに加速すると考えている」と期待を寄せた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. 楽天モバイルのスマホが乗っ取られる事案 同社が回線停止や楽天ID/パスワード変更などを呼びかけ (2024年04月23日)
  2. シャープ、5月8日にスマートフォンAQUOSの新製品を発表 (2024年04月24日)
  3. スマホを携帯キャリアで買うのは損? 本体のみをお得に買う方法を解説 (2024年04月24日)
  4. Vポイントの疑問に回答 Tポイントが使えなくなる? ID連携をしないとどうなる? (2024年04月23日)
  5. 通信品質で楽天モバイルの評価が急上昇 Opensignalのネットワーク体感調査で最多タイの1位 (2024年04月25日)
  6. スマートグラス「Rokid Max 2」発表 補正レンズなくても視度調節可能 タッチ操作のリモコン「Rokid Station 2」も (2024年04月25日)
  7. ドコモ、「Xperia 10 V」を5万8850円に値下げ 「iPhone 15(128GB)」の4.4万円割引が復活 (2024年04月25日)
  8. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダー発売 スマート感知センサーで自動録画 (2024年04月25日)
  9. 中古スマホが突然使えなくなる事象を解消できる? 総務省が「ネットワーク利用制限」を原則禁止する方向で調整 (2024年04月25日)
  10. 「iPhone 15」シリーズの価格まとめ【2024年4月最新版】 ソフトバンクのiPhone 15(128GB)が“実質12円”、一括は楽天モバイルが最安 (2024年04月05日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年