新ジャンルのGALAXY Note発売/シャープ×鴻海の相乗効果/通信の体感速度向上を目指すKDDI石野純也のMobile Eye(3月26日〜4月6日)(1/2 ページ)

» 2012年04月06日 18時02分 公開
[石野純也,ITmedia]

 年度末をまたぐ3月26日から4月6日にかけての2週間は、モバイル関連でもニュースが目白押しだった。端末関連で注目したいのが、3月28日に発表された「GALAXY Note SC-05D」だ。5.3インチのディスプレイを搭載し、「S Pen」による入力という新たな操作法を提案した意欲作。スマートフォンでもタブレットでもない、新ジャンルの商品が日本でどのように受け入れられるのかという観点からも、目が離せない端末といえる。一方で、日本の携帯電話市場でトップシェアを誇るシャープが、台湾の鴻海グループと資本提携する運びとなった。液晶パネルや堺工場の引き受けが主なトピックだが、今後のスマートフォン戦略にも影響を与えそうだ。通信という点では、4月10日からKDDIが導入する「EV-DO Advanced」が外せない話題だ。既存端末でも恩恵を受けられるため、幅広いユーザーに関連したニュースといえるだろう。

デジタルとアナログの融合を目指す「GALAXY Note」が発売

→・デジタルとアナログが融合――「GALAXY Note」で新市場の創出を狙うSamsung

photo 5.3インチの大画面でS Penを利用できるGALAXY Note

 サムスン電子ジャパンが、3月28日に5.3インチディスプレイを搭載した「GALAXY Note SC-05D」を発表した。従来のスマートフォンより一回り大きなサイズが特徴で、ワコムの技術を採用した「S Pen」でスムーズな手書き入力を実現。同社の専務、石井圭介氏が「NoteとS Penの出会いが、スマートフォンの新たなジャンルを創造する」と意気込むように、GALAXY Noteは市場を広げることを狙った意欲的な商品だ。

 過去、数々のスタイラス搭載端末が発売されてきたが、「今までのスタイラスには一度も満足したことがない」と石井氏が話すように、どれも成功を収めているとはいいがたい状況だった。こうした問題を解決するため、Samsung電子は業務用タブレットなどで定評のあるワコムの技術を導入。「ペンによるアナログ体験、感性も組み込んだ最先端のデバイス」(石井氏)として、GALAXY Noteを開発した。ペン入力の「筆圧は128段階で感知できる」(石井氏)ため、絵の細かなタッチまでしっかり再現される。

photophotophoto サムスン電子ジャパン 専務の石井圭介氏(写真=左)。S Penというスタイラスで操作が可能。ボタンが搭載されており、キャプチャも一発で行える(写真=中)。筆圧を感知できるため、繊細なタッチを表現できる。イラストも描きやすい(写真=右)

 日本上陸にあたっては文字入力機能を重視し、手書き入力で定評のある7knowledge社の「7notes with mazec」をプリインストール。「日本独自のひらがな、カタカナ、漢字を自動で判別できる」(石井氏)機能を持ち、手書きの文字を後から認識して変換できる。メモを取る際などに活躍しそうだ。グローバル版でおなじみの「Sメモ」や「Sプランナー」といったペン操作を生かしたアプリも内蔵する。韓国版や北米版と同様LTEに対応し、下り最大75MbpsのXiを利用できるほか、日本独自のワンセグを搭載。オレンジ色のフリップカバーが同梱されるのも日本向け製品だけの特典だ。

photophoto 「7notes with mazec」を搭載。手書き認識は日本語入力システムとして、そのほかのアプリでも呼び出せる(写真=左)。ペンの選択が可能で、呼び出しも簡単なSメモ(写真=右)
photophoto スケジュールの移動をペンで行えるSプランナー(写真=左)。写真左のフリップ式カバーが同梱されるのも日本だけ(写真=右)
photo GALAXY Noteのペン入力に最適化したアプリを集めた「S Choice」

 また、SamsungはGALAXY Noteのエコシステムを重視しており、石井氏も「開発者の皆様と一緒に、S Penを活用したアプリを続々と出していきたい」と意気込む。同社では初となる開発者向けのカンファレンスも発表会後に開催された。こうして完成したアプリは、GALAXY Noteの「S Choice」というペン入力に適したものだけを集めたストアで配信される。現時点では英語のものが混在しており少々取っつきにくい印象だが、今後、こうした状況は改善されていくはずだ。

 新ジャンルの製品とあって、グローバルでも当初は成功を疑問視する声もあったが、Samsungは実際に端末を手に取ってもらえるよう、「GALAXY Note Studio」と呼ばれるブースを世界各国で展開。イラストレーターにGALAXY Noteで絵を描いてもらえるという分かりやすさが功を奏し、徐々に火がつき販売台数を伸ばしていった。サムスン電子ジャパンの代表取締役 チョウ・ホンシク氏によると「3月末には累計で500万台を達成する見込み」だという。月産200万台の体制も整っているそうで、グローバルではGALAXY Sシリーズに続くヒット商品に成長しつつある。このStudioは日本でも約150か所で展開する。ブースは大小さまざまだが、ドコモショップ内で行われることもある。先行して投入した市場では「Studio近くの販売店で売り上げが伸びた」(Samsung関係者)というだけに、日本でも販促効果が期待できそうだ。

photophoto 東京では、渋谷・109前や原宿・ラフォーレ前に「GALAXY Note Studio」が開設された。オープン初日にも、すでに行列ができていた(写真=左)。109前でのオープニングイベントには、タレントの神戸蘭子さん(左)とユージさん(右)が駆け付けた(写真=右)
photophoto サムスン電子ジャパン 代表取締役のチョウ・ホンシク氏(写真=左)。グローバルでは3月末で500万台を突破。GALAXY Sシリーズに続くヒットモデルになった(写真=右)

 このGALAXY Noteが4月6日にドコモから発売された。同日に開催されたイベントで、サムスン電子ジャパンの石井氏は「競合がなく長く販売していく商品。70万台(の販売)を目標にしている」と語った。日本でも息の長い商品として、ロングヒットにつなげていきたい構えだ。GALAXY Note Stuidoが設置されることもあり、端末を目にする機会も多いだろう。新ジャンルの商品だけに、興味があればぜひ実機を手に取ってみることをオススメしたい。

台湾・鴻海グループがシャープの筆頭株主に、スマホでの提携も5月に発表へ

photo 緊急会見に登壇したシャープの現・代表取締役社長 奥田隆司氏

 3月27日には、シャープが緊急会見を開催。台湾に本社を置く鴻海(ホンハイ)グループと資本提携関係を結び、液晶パネルなどを含む主要分野で協業を行うと発表した。これに伴い、鴻海精密工業がシャープの堺工場で生産する液晶パネル、モジュールの50%を引き受けることが決定している。シャープは新株を発行し、鴻海グループに対して第三者割当増資を実施。鴻海グループの出資比率は約10%弱となり、シャープの筆頭株主に躍り出ることになった。

 4月1日に社長に就任したシャープの常務(当時) 奥田隆司氏は「オンリーワンのデバイスや商品を開発する技術力はあるが、ここ数年は円高や6重苦と呼ばれる経営環境の中にあり、新しいビジネスや市場への対応力、スピードが不足し、グローバル市場において当社の強みを発揮できなかった」と、今回の提携の背景を解説。シャープ単独の垂直統合モデルに限界があったことを認め、今後は鴻海グループと「グローバルな垂直統合モデルを一緒に作り上げていく」(奥田氏)。

 各社の報道では主にディスプレイ分野の話が話題を集めていたが、この提携はモバイル分野の事業にも影響を与えることになりそうだ。奥田氏は会見で「携帯電話やモバイル端末機器も、鴻海グループと共同・共通設計、あるいは同じ工場を使った生産の効率化を図れる。さらには調達を共通化することで、スケールメリットによる大幅なコストダウンと、販売量の拡大を進めていく」と述べている。また、質疑応答の中で奥田氏は、鴻海グループとの協業について「いろいろな相乗効果がある」とし、「事業拡大の具体的な説明会を5月ごろに開きたいと考えている」と語った。

photophoto 鴻海精密工業のテリー・ゴウ会長。シャープに製造者の役割から脱却することを期待しているという

 シャープでは海外向け端末の一部に鴻海グループのようなEMSを活用しているが、こうした取り組みが拡大していく可能性はある。すでにシャープは中国やインドなどに進出しているが、手薄の北米や欧州を強化する際にも鴻海グループの製造能力を生かすことができるだろう。また、鴻海グループはAppleのiPhoneをはじめとする、グローバル企業のスマートフォンを製造していることでも有名な企業だ。シャープのスマートフォン向けのディスプレイや、カメラモジュールなどを、製造と合わせて共同で販売していくという方向性も考えられる。いずれにせよ、これらはまだ推測の域を出ておらず、シャープと鴻海グループ側でも何か具体的な方針が決定したわけでもない。5月の発表でどのような戦略が語られるのか。スマートフォン分野での続報にも注目してほしい。

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