OSとプロダクトのさらなる進化 Appleが創りだすポストPC時代の新基準神尾寿のMobile+Views(4/4 ページ)

» 2012年06月12日 22時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

地図の刷新で、iPhoneの価値が倍増する

 iOS 6において、重要かつ大きな変化になりそうなのが、地図機能「Maps」である。

 新たなMapsでは地図のデータがベクターベースのものに刷新され、拡大縮小などの操作が滑らかになるほか、店舗などの詳細な施設情報も地図内に内包される。フォーストール氏によると、その総数は約1億件になり、これらはSiriとも連携するという。加えて、Mapsでは交通渋滞情報などリアルタイム性の高いコンテンツも入り、その情報量は従来のMapsを大きく上まわる。

PhotoPhoto iOS 6の目玉ともいえる「Maps」の刷新。地図が新しくなり、ベクターデータとして表示されるようになった
PhotoPhoto
PhotoPhoto タウン情報やリアルタイムの渋滞情報など、地図上のコンテンツも充実させている。日本でどのくらい情報量が増えるのか、注目したいところだ

 地図そのものの表現力も上がる。新たなMapsでは建物が立体的に表示される3D表示に対応するほか、従来の衛星写真に加えて、ヘリで街を周遊するような「Flyover」の表示もできるようになる。キーノートではこのデモンストレーションも行われたが、高密度にレンダリングされる街の風景はとても美しく、実用性を抜きにしても楽しめそうだ。

PhotoPhoto
PhotoPhoto Flyoverでは、リアルタイムでレンダリングされた建物が立体的に表示される。RetinaディスプレイのiPhone/iPadで見たときのリアリティは圧巻の一言

 そして、もう1つ大きな進化が、カーナビゲーション機能の内蔵だろう。Appleではこれを「Turn-by-Turn Navigation」と名付けているが、実際の画面を見れば分かるとおり、その画面には進行方向だけでなく道路地図も描かれており、実用上は“普通のカーナビ”と大差ない。Turn-by-Turn Navigationの動作中はスリープ状態になって画面が消えることもない。

 Turn-by-Turn Navigationもデモンストレーションが行われたが、その動きはとてもスムーズであり、Retinaディスプレイを搭載したiPhoneでは地図画面や進行方向表示もとても見やすい。また当然ながら操作はSiriに対応しており、高精度な音声認識・操作が可能。カーナビで使用する施設情報などの各種コンテンツは、クラウドサービスを通じて常に最新のものが利用できる。

 MapsのTurn-by-Turn Navigationが、日本でどの程度の精度・情報量になるかは分からないだが、今回WWDC 2012で公開された北米版を見る限り、その“カーナビとしての機能”は凡庸な専用カーナビなら蹴散らしてしまうものになりそうだ。とりわけUIやナビ画面のなめらかな動き、クラウド連携を背景にした情報量の多さとSiriの高精度音声認識には大きなインパクトがある。少なくとも今後のカーナビ市場では、“通信機能を内蔵してクラウド連携をしていないカーナビ専用機”は確実に淘汰されていくだろう。

PhotoPhotoPhoto Mapsの新機能「Turn-by-Turn Navigation」。カーナビとして使えることはもちろん、iOSの基本機能となっているため、サスペンドモードでの動作やSiriとの連携がしっかりと行われている
PhotoPhoto 実際のデモを見ると、Turn-by-Turn Navigationのスムーズな動きには驚かされる。使い勝手のよさでは、カーナビ専用機をも凌駕しそうだ

“新基準”を創り出すApple

 WWDC 2012の基調講演は2時間を超える長丁場でありながら、聴く側にとっては「テンポが速い」と感じるものだった。それほどまでに情報量が多く、それでいて、1つ1つの要素すべてが重要かつ革新的なのだ。そして、新型のMacBook Pro、OS X Mountain Lion、iOS 6のすべてが、新たな道を切り拓くものになっている。

PhotoPhoto キーノート終了後、会場外に展示されていた新世代のMacBook Pro

 今回はティム・クック氏の新体制になって初めてのWWDCであったが、そこで示されたのは「新しい基準を作るのは、やはりAppleである」ということだった。とりわけその牽引力の強さは、iOS 6の姿に多く垣間見られた。まさに今日、Appleは次のスタンダードを作ったのである。

 これから秋に向かい、Appleの新たな製品とOSが出そろってくる。そして、それはユーザーにとっても実り多きものになりそうだ。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年05月10日 更新
  1. 新型「iPad Pro」がM3チップをスキップした理由 現地でM4チップ搭載モデルと「iPad Air」に触れて驚いたこと (2024年05月09日)
  2. 個人が「Excel」や「Word」でCopilotを活用する方法は? (2024年05月08日)
  3. 「M4チップ」と「第10世代iPad」こそがAppleスペシャルイベントの真のスターかもしれない (2024年05月10日)
  4. M4チップ登場! 初代iPad Proの10倍、前世代比でも最大4倍速くなったApple Silicon (2024年05月08日)
  5. Core Ultra 9を搭載した4型ディスプレイ&Webカメラ付きミニPC「AtomMan X7 Ti」がMinisforumから登場 (2024年05月08日)
  6. NECプラットフォームズ、Wi-Fi 6E対応のホーム無線LANルーター「Aterm WX5400T6」 (2024年05月09日)
  7. iPad向け「Final Cut Pro 2」「Logic Pro 2」登場 ライブマルチカム対応「Final Cut Camera」アプリは無料公開 (2024年05月08日)
  8. SSDの“引っ越し”プラスαの価値がある! 税込み1万円前後のセンチュリー「M.2 NVMe SSDクローンBOX」を使ってみる【前編】 (2024年05月06日)
  9. これは“iPad SE”なのか? 新型iPadを試して分かった「無印は基準機」という位置付けとシリーズの新たな幕開け (2022年10月24日)
  10. パナソニックがスマートTV「VIERA(ビエラ)」のFire OSモデルを6月21日から順次発売 Fire TVシリーズ譲りの操作性を実現 (2024年05月08日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー