やっぱり俺はダメなのか?518日間のはい上がり(2/2 ページ)

» 2011年10月14日 11時40分 公開
[森川滋之,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

 帰宅してもしばらくは、アンケートを見る勇気がなかった。小一時間ためらって、ようやく読み始めたアンケートには、こう書いてあった。

 「あなたのオナニーに付き合わされたような気がしたわよ」

 「氏名:秘密、住所:地球、連絡先:連絡しないでね」

 ――2枚が限界だった。俺は、意味不明の言葉を叫びながら、押し入れから乱暴に布団をひっぱり出した。敷き方なんかもうめちゃくちゃだった。とにかく布団を敷き、毛布を頭からかぶった。

「もう、いやだ。もう、いやだ。いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。みんな死んじまえ」

 だだっ子のように叫びまくり、泣きじゃくった。このまま飢え死にしたかった。俺は、それから本当に三日三晩布団の中にいたんだ。

 腹なんかまったく減らなかったが、さすがに眠くはなった。人間、眠気にだけは勝てない。いつの間にか眠りに落ちるのだが、悪夢で目が覚める。

 セミナーをしているのに、オナニーはやめろとか、連絡するなよとか罵声を浴び、石を投げられる夢。突風で散っていく桜の花びら1枚1枚が俺の顔という夢。閻魔大王が俺のセミナーのVTRを上映し、それを地獄の鬼たちがあざけり笑っている夢。地獄の鬼はよく見たら参加者とかみさんだった。

 今思うとどこか笑える夢なんだが、そのときの俺には本当に怖い夢だった。悪夢を見るたびにギャアーと叫んで目を覚まし、また疲れ果てて眠りに落ちるまで、意味不明の言葉をつぶやいたり叫んだりしていた。あとで教えてくれたが、かみさんは本当に気が狂うんじゃないかと心配したんだそうだ。

 人を呪う言葉も出し尽くし、涙も喉もかれ果てた3日後。俺は意を決して布団からはい出した。

 確かに参加者を呪ったけれど、彼らのせいにだけは最後までできなかった。そうできれば楽だったんだけど、それだけはしてはいけない。それをしたら俺はまた、あの酒とタバコとギャンブルの日々に戻ってしまう。そうなったら今度こそ俺は終わりだ。そう思ったんだ。

 だけど、俺は何をすればはい上がれるんだろう。人生逆転をかけた教材販売もダメ。一生ダメとは思わないが、すぐには儲からないだろう。セミナーで集客してものを売るのも、セミナー自体で稼ぐのも同様だ。

 禁煙に成功したという実績しか自分にはない。それを思うと、今度こそ万策尽きた気がする。

著者が提唱する「333営業法」とは?

 著者・森川滋之が、あの「吉田和人」のモデルである吉見範一氏と新規開拓営業の決定版と言える営業法を開発しました。3時間で打ち手が分かるYM式クロスSWOT分析と、3週間で手応えがある自分軸マーケティングと、3カ月で成果の出る集客ノウハウをまとめた連続メール講座(無料)をまずお読みください。確信を持って行動し始めたい方のためのセミナーはこちらです。

著者紹介 森川滋之(もりかわ・しげゆき)

 ITブレークスルー代表取締役。1987年から2004年まで、大手システムインテグレーターにてSE、SEマネージャーを経験。20以上のプロジェクトのプロジェクトリーダー、マネージャーを歴任。最後の1年半は営業企画部でマーケティングや社内SFAの導入を経験。2004年転職し、PMツールの専門会社で営業を経験。2005年独立し、複数のユーザー企業でのITコンサルタントを歴任する。

 奇跡の無名人シリーズ「震えるひざを押さえつけ」「大口兄弟の伝説」の主人公のモデルである吉見範一氏と知り合ってからは、「多くの会社に虐げられている営業マンを救いたい」という彼のミッションに共鳴し、彼のセミナーのプロデュースも手がけるようになる。

 現在は、セミナーと執筆を主な仕事とし、すべてのビジネスパーソンが肩肘張らずに生きていける精神的に幸福な世の中の実現に貢献することを目指している。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ