USB DACやUSBスピーカーなど、USB接続のオーディオ機器を接続する際に利用されるのが「USB Audio Class」と呼ばれる標準規格だ。
こちらには2012年6月現在、USB Audio Class 1.0と、同2.0、2つの世代が利用されている。Mac OS Xは10.6.4時点で両方がOSの標準ドライバとしてサポート済み、一方、Windowsは2000以降、最新のWindows 7も含めてOS標準サウンドドライバとしてのサポートはUSB Audio Class 1.0までとなっている。
この標準サウンドドライバとしてサポート済み──というのは、USBメモリやマウスなどと同じように、機器をPCのUSBポートに差せば専用ドライバなしに基本動作します、ということを示す。このため、WindowsでUSB Audio Class 2.0対応のオーディオ機器を使用する場合は、現時点、別途(メーカーが提供するなどの)専用ドライバのインストールが必要になる。使えるならばどちらでもいいのだが、差せばすぐ使える手軽さは捨てがたい。
では、1.0と2.0は何が違うか。ご存じ普通のUSB 1.1とUSB 2.0と同様に、ひとまず最大転送速度が違う。USB Audio Class 1.0は、USB Full Speedモードと同じ最大12Mbps(=USB 1.1)で、1フレームあたりの理論値最大データ量は1023バイトとなる。
同じ計算で、ハイレゾリューション音源に位置付ける例えば192kHz/32ビットのデータとなると、1フレームあたり1536バイトに増大し、伝送可能な最大量を超える=伝送/再生できないことになる。USB Audio Class 1.0で対応可能とするサンプリングレートは、一般的に96kHz/24ビット(同576バイト)あたりが上限とされている。
ただ、最近は192kHz/24ビットまでのハイレゾリューション音源対応USBオーディオ機器もWindowsのOS標準サウンドドライバでOKとするものが登場している。これはどんな仕組みなのか。
USB Audio Class 1.0でのFull Speedモードは、OHCI(Open Host Controller Interface)やUHCI(Universal Host Controller Interface)と呼ばれるUSBホストコントローラを使って機能するが、これらに加えて「EHCI」(Enhanced Host Controller Interface)という拡張された規格も存在する。理論値最大480MbpsとなるUSB 2.0に用いられ、動画データやDTS-HD、Dolby True HD 9.1chサラウンド音声といった大量データの伝送に対応する。例えばラトックシステムのUSB DAC内蔵ヘッドフォンアンプ「RAL-24192HA1」は、USB Audio Class 1.0ながら、EHCIコントローラを用いることで、こちらのHigh Band Widthモードで最大480Mbpsでデータを伝送可能に=Windowsでもドライバレス/OS標準オーディオドライバでハイレゾ音源の扱いを可能としたということになる。
この仕組みは、RAL-24192HA1や同社の「RAL-24192DM1」、Antelope Audioの高級USB DAC兼プリアンプ「ZODIAC GOLD」(最大サンプリングレート384kHzまで対応)などが採用する。今後は、こういった方式を利用する製品も増えてくると思われる。
USBのデータ転送は、コントロールのほかバルク/インタラプト/アイソクロナスのいずれか転送モードを利用する。一般的に、コントロール転送はどんな仕様機器が接続されたかを認識させるためすべてのUSB機器が使用、バルク転送はHDDなど大容量データを一括/高信頼で転送する時に、インタラプト転送はキーボードやマウスなど不定期な小容量データを効率よく定周期で転送する時に、アイソクロナス転送は音声データなどリアルタイムに、一定期間/一定量を保証しつつデータを転送する時に用いる。
USBオーディオ機器はこのうち、データが途切れ途切れになるのは困る利用シーンで用いるので、基本的にアイソクロナス転送モードを利用する。USB Audio Classでは、音声データと一緒にそれにひも付いたクロック信号も伝送されているが、その信号とUSB DAC側のUSBホストコントローラを同期させるのが「シンクロナス(同期)転送」方式、それとは同期させず、USBオーディオ機器/USB DAC内部に備える(一般的に、より高精度な)クロックによって独自動作するのが「アシンクロナス(非同期)転送」方式となる。
アシンクロナス転送方式は、ジッタエラー(クロックの時間軸揺れによって発生する、不正確さを起因とする現象)の低減に貢献し、どちらかというと高性能/高音質志向な機器で採用される。ただ、かなり高い精度のクロックを搭載しなければ実力を発揮できないほか、Windowsでは独自ドライバなどを活用しないとアシンクロナス方式を利用できない機器もあるなど、若干難易度(と価格帯)の高いものとなっている。
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