インタビュー
» 2011年12月09日 10時25分 公開

「夜中の1時にドン・キホーテへ行け」――ユードー南雲氏に聞く ヒットアプリの作り方 (2/2)

[田中聡,ITmedia]
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ゲームの鍵は“ソーシャルとGPS”

―― もう1つの大きなテーマに「ゲーム」がありますが、ゲームではどこに重きを置いていますか?

南雲氏 “ソーシャル”の波が来ているのは間違いないですね。直近ではテガキモンスターを出しましたが、iPhoneの中にある音楽を使ってゲームをするのも面白いかもしれません。ロワイヤル形式のソーシャルゲームはもう出尽くしていますし、大手がやればいいと思います。僕たちの会社は小さいので、音楽系や映像、アートなど、他のテーマと連携させていきたいです。

―― テガキモンスターの反響はいかがですか?

南雲氏 ダウンロード数は狙い通りで、1日3000〜4000ダウンロードほどです。最初はApp Storeに「テガキモン」で登録されちゃいましたけど(笑)。

photophotophotophoto 自分の描いたモンスターでバトルができる「テガキモンスター」。バトルやミッションを経てレベルが上がっていく。モンスターを強化するアイテムも購入できる

―― 次の一手も気になります。先ほど話に挙がった、自分の音楽を使ったソーシャルゲームは面白そうですね。

南雲氏 自分の持っているサウンドをマップ上に置いて他のユーザーと共有するアプリを考えたことがあります。通勤中に曲を聴いて特定の場所に置いて、友達とシェアして、通過するたびにBGMが変わるとすごく面白いと思ったんですが、先に進みすぎていたのでやめました(苦笑)。

photo

―― 他にもお蔵入りになったアイデアはあるんですか?

南雲氏 たくさんありますよ。例えば“音楽キャッチボール”。今聞いている音楽を投げて、東京から埼玉の人にとか、遠くの人に聴いてもらうという内容です。これも面白そうだけど、一言で言っても分からないだろうということで、ボツになりました。

―― こうしてお話を聞いていると、どれもGPSが重要な技術になりそうです。

南雲氏 ええ。GPSは来年(2012年)くらいからようやく根付くと思います。そうなったときに、GPSを使ったアプリを出せるのかなと。

―― テガキモンスターもGPS連動する予定はありますか?

南雲氏 もちろん考えています。例えば、大手町集団と広島の尾道集団とバトルができたら面白いですよね。企画が面白いから、結果としてGPSを使うというのがいいと思います。技術ではなく企画ありきです。他には駅やお店と連携して広告展開もできる。駅や店のイメージキャラクターをテガキモンスターに登場させて戦わせるのもいいと思います。

―― テガキモンスターでは、絵の上手い“画伯”が活躍できるチャンスもあると思うのですが、例えばプロのイラストレーターが自分のイラストを販売できるような仕組みは検討されているのでしょうか。

南雲氏 もちろんそれも考えています。プロが描いたイラストを採用することで、全体のクオリティが上がります。

―― 私もテガキモンスターを少し遊んでみましたが、ミッションパートは項目を選ぶだけで簡単にクリアできますよね。必要なものを集めないとクリアできないなどのゲーム要素が少ない感があります。

南雲氏 ミッションはゲームの遊び方を覚えてもらうためのものです。ゲーム要素はレベルが高くなってからですね。最初から難しくすると続かないので、難易度は段階的に上げていく予定です。

―― レベルはどこまで上がるのでしょうか?

南雲氏 レベルは無制限ですが、ミッションが46ステージしかないので、その先を用意しているところです。ゲームデータはサーバにあるので、常にバージョンアップできます。

―― 自分の描いたモンスターを見せることがテガキモンスターの魅力ですが、例えばTwitterなどと連携して「こんなモンスターを描いた」と見せられると、もっと面白いと思います。

南雲氏 それも考えました。でも、FacebookやTwitter連動にそもそも意味あるのかという疑問もあります。SNS連携というと、何となく響きは格好いいけど、「テガキモンスターでレベル8になりました」とかつぶやかれても、周りは困るのではと。そこは本質ではないと判断したので、SNS連携は見送りました。ただ、自分の描いたモンスターを「Twitpic」などの画像投稿サイトと連携して、Twitterに送信できる機能は検討しています。

alt テガキモンスター

―― 今後はどんなゲームを作っていきたいとお考えですか?

南雲氏 僕たちは、音楽アプリを深く掘り下げない方がいいと思います。専門的なところは楽器メーカーの領域になるので、シンセサイザーで楽曲を作るみたいなアプリはあまりやらないでしょう。iPhone向けは大衆を狙っているので、音楽をもっと気軽に楽しめるようなゲームを作っていきたいですね。PianoManやAero Guitarから大きく振り幅を変えずにバリエーションを増やしていく予定です。

―― ソーシャルゲームの攻めどころはどこにありそうですか?

南雲氏 僕たちならではのアイデアだと思います。モンスターに手描きをミックスしたように、ソーシャルゲームに音楽の要素を付けるとか……これも僕らしかできないことだと思います。

―― すでに新しいアイデアは形になりそうなんですか?

南雲氏 今話せるところでは、自分の作った音楽に強さや防御力を付けてバトルをすると面白いんじゃないかと。下手な人が作った音楽は聴きたくないじゃないですか。でも曲が強かったら戦わないといけない……音楽を別の角度から感じられるわけです。歌が下手でも強い曲だったらバトルしますよね。テガキモンスターと一緒で、上手い下手は関係ないんです。iPhoneにはマイクも付いてますし、鼻歌でもギターでも気軽に音楽を吹き込めるわけです。

YUDO-IDでユーザーを囲い込む

photo Android向け「PianoMan」

―― iPhoneアプリの開発が中心ですが、Androidアプリへの取り組みはいかがでしょうか。

南雲氏 PianoManなどAndroidアプリも配信していますが、アプリに対するモチベーションが高いのは、確実にiPhoneですね。

―― iPhoneとAndroidユーザーの比率はどれくらいですか?

南雲氏 比率を出したことはありませんが、ユードーアプリのユーザーはiPhoneの方がかなり多いですね。

―― 端末のシェアはAndroidがiPhoneを逆転しています。iPhoneユーザーとAndroidユーザーはどこが違うのでしょうか。

南雲氏 iPhoneユーザーは「App Storeに行けば何かある」という習慣がついているんです。一方、Androidユーザーは「Android マーケットって何?」から説明しないといけない。起動するとアプリがたくさん入っているけど何をしていいか分からない。選択肢が多いとユーザーは何も選びません。PCにプリセットされているショートカットと似ていますね。

alt Piano Lesson PianoMan

―― プリインアプリにはキャリアやメーカーの意向が反映されていますが、コンテンツプロバイダーにとってはそこにチャンスがあるとも言えます。ドコモはdメニューを開始し、KDDIもau one Marketやスマートフォン向け公式サイトをau oneで展開しています。現在キャリアとはどの程度連携しているのでしょうか。

南雲氏 PianoManはau one Marketでも配信しています。けっこう反響はありますね。ドコモさんとは特に連携していませんが、個人的にはキャリアのマーケットに依存するやり方はちょっと古いかなと感じています。

―― キャリアとの連携にこだわっているわけではないと。

南雲氏 ええ。むしろ1本Androidでドカンとヒットするアプリを作って、自社でユーザーを回していく方が効率的です。斉藤さんは2カ月で20万ユーザーを獲得し、Android版も望まれています。その声に応えて斉藤さんのAndroid版も出す予定です。そしてキャリアのマーケットに依存するのではなく、自社でユーザーを囲い込んでいく。それが「YUDO-ID」につながるわけです。

―― YUDO-IDにはどんなメリットがあるのでしょうか。

南雲氏 YUDO-IDは現在はテガキモンスターで、そして、PianoMan、斉藤さんで導入準備をしています。特典については今まさに実装しているところですが、例えば斉藤さんユーザーがテガキモンスターをインストールすると、斉藤さんでメールをやり取りできる機能が追加される、という具合です。また、YUDO-IDは広告モデルにつながっていきます。ユーザーの属性を取って、許可をもらった上で、ターゲティングした広告を配信できるわけです。

―― ユードーアプリのダウンロード数は累計1000万を超えて、今後は2000万ダウンロードを目指すとのことですが、2000万を達成するためには何が必要だとお考えですか?

南雲氏 斉藤さんやテガキモンスターのようなヒットアプリを自社で出していくことですね。他社やクリエーターの方にも参加いただき、相互にメリットのある形を目指していきたいです。

海外を意識してゲームを作ると失敗する

―― 海外展開はどうでしょう。日本と海外のコンテンツに対するトレンドの違いは大きいですか?

南雲氏 とても大きいと思います。PianoManは海外でもヒットしていますが、現地の楽曲を使ってローカライズする必要があります。斉藤さんのようなアプリは、韓国版では「キムさん」、米国版では「ジェームスさん」として出す、みたいなジョークは通じると思います。

―― 確かに、日本人はメールが好きだけど、海外では通話が主流というイメージがあります。

南雲氏 そうなんです。斉藤さんは世界でも受けると思います。インド人はどんな名前が多いのかとか、(アプリ名を決めるために)国々で一番多い名前を調べるのが大変そうですが(笑)。

―― ソーシャルゲームはいかがですか?

南雲氏 90年代のゲーム業界を見ていると分かりますが、海外を意識してソーシャルゲームを作ると失敗すると思います。日本の世界観を海外に持っていった方が「クールジャパン」だと支持される。ポケモンが海外でも受けたように、程よく日本らしさを出していきたいですね。


 ゲームはHELPが要らないほどシンプルな作りに徹し、ソーシャルとの連携が重要になる。SNSは音声の波が来ている。そしてYUDO-IDでユーザーの囲い込みと広告モデルの確立を目指す――。スマートフォンアプリで着実に存在感を高めているユードーの動向を今後も注視したい。

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