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» 2010年11月26日 01時27分 UPDATE

mobidec2010:「Appleと戦うにはガラケーをAndroid化すべき」――夏野氏が考える日本携帯の“再生案” (1/2)

iモード誕生後の2000年代前半、日本の携帯業界は黄金期だったが、iPhoneの登場によって端末やコンテンツを取り巻くビジネスが変わりつつある。通信事業者、メーカー、CPは何をすべきか。夏野剛氏が基調講演で自身のプランを披露した。

[田中聡,ITmedia]

 iPhoneを初めとするスマートフォンの台頭で、日本のケータイビジネスは大きな過渡期に入りつつある。かつてNTTドコモに在籍し、iモードやおサイフケータイなど歴史に残るサービスを世に送り出した夏野剛氏は、日本の携帯業界の現状をどのようにみているのだろうか。現在は慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 特別招聘教授として活動している同氏が、「モバイル日本再起動のために〜黒船VSガラケー論を超えて」というテーマでmobidec2010の基調講演に登壇。これまでの携帯市場の歴史を振り返るとともに、通信事業者、メーカー、CP(コンテンツプロバイダー)が「今何をすべきか」を語った。

2000年代前半の携帯業界は黄金期だった

photo 慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 特別招聘教授 夏野剛氏

 夏野氏によると、1999年にiモードが誕生してからの10年は、前半と後半に大きく分けられ、とりわけ2000年代前半の日本の携帯業界は「黄金時代だった」と振り返る。「2000年代はインターネットがメディアの一角になり、あらゆることが変わった。日本ではモバイルが大きな進化を遂げ、ガラケー(従来型のケータイ)を含めたモバイルの分野では、米国よりもはるか先に花咲いていた」

 実際、ケータイ向けのブラウザやEメールなどのインターネットサービス、Java、Flash、PDFなどのアプリケーション、着メロ、着うた、着うたフルなどの音楽サービス、おサイフケータイ、遠隔ロック、災害伝言板、緊急地震速報などのセキュリティサービス、そしてカメラ、防水、ワンセグなどの機能は、日本が先行していた。

 ただし、これまでの日本の携帯ビジネスは「良くも悪くも通信事業者が主導のモデル」であり、キャリアが販売奨励金を払って端末を安く売り、毎月の通信料から回収するというモデルが主流になった。これがケータイの高機能化やサービスの拡充に貢献し、ARPUが増える好循環が生まれた。こうして、ケータイのデジタルコンテンツ市場は3キャリアの公式サイトで1兆円規模にまで成長した。「ケータイでのネット利用者は契約数の90%を超えている。こんな国は日本以外にない」(夏野氏)

photo 2000年代前半の携帯業界は黄金期だった

iPhoneはUIとタッチパネルが衝撃だった

 こうした日本のビジネスモデルに変調をもたらしたのが、2006年に発売された「iPhone」だ。「黒船」と称されることも多いiPhoneの登場を契機に日本でもスマートフォンへの移行が進み、端末やケータイコンテンツの市場に少なからず影響を及ぼした。

 「iPad(3Gモデル)」と「iPhone 4」を併用しているという夏野氏は「iPhoneはUIとタッチパネルが衝撃だった」と感想を述べる一方で、「ほかの機能はガラケーにも搭載されている」とみる。「ほとんどのアプリはJavaやBREW上で開発されれば事足りる。ローエンドからハイエンドまですべてカバーするガラケーと、ハイエンドをカバーするスマートフォンとはそもそもポリシーが違う」。ただ、タッチパネルの操作性や多様化についてはケータイの方が遅れているとした。スマートフォンの価値は「UIの違い」にあると同氏はみる。

 加えて、総務省が販売奨励金モデルの変更を指導したことで端末代が上がり、2008年にはケータイの販売台数が5000万台から3000万台に減少するに至った。「通信業者は過当競争はしたくないので、利益をキープしたければ販売奨励金を減らせばいい。ただ、端末の買い替えサイクルが長くなるので、CPさんにコンテンツを出してくださいとは言いにくくなる。メーカーも新しい機能を載せにくくなる」と同氏が話すように、これまでキャリア、CP、メーカーが築いてきたWIN-WINの関係が崩れてしまった。「キャリアは通信料があるので短期的には利益を維持できるが、メーカーへの打撃は大きい。CPにとっても新しいビジネスチャンスが生まれにくくなる」

photo 総務省の介入やiPhoneの登場で日本のビジネスモデルは変化した

海外では通信業界 vs インターネット業界

photo 日本、欧州、発展途上国でインターネットプレーヤーが存在感を高めている

 海外市場に目を向けると、欧州と米国では2004年〜2005年にようやくデータ通信を開始したが、MotorolaやNokiaなどの端末メーカーは日本メーカーのようにPCは製造しておらず、ほとんどが携帯専業メーカーだったため、「コンピューターに対して驚くほど知識がなかった」(夏野氏)という。そんな海外メーカーがケータイ向けに開発したインターネットの仕様が「WAP」だ。2000年台前半には数億台のWAP端末が投入されたが、コンテンツがそろわなかったので、日本ほどの市場規模には成長しなかった。その後2007年に欧米で初代iPhoneが発売され、スマートフォンによるデータ通信が広がり始めた。

 日本ではスマートフォン vs ケータイと言われることが多いが、海外では「通信業界 vs(AppleやGoogleなどがけん引する)インターネット業界という構図になっていると夏野氏は考える。「フィンランド人の通信事業者から『WAPという標準を作らないと、通信事業者は乗っ取られる』という話を聞いてびっくりしたことがある。通信業界側はメーカーも含めてオペレーターがそういう発想を持っていた」

 また、ケータイコンテンツの課金対象も海外と日本では異なる場合があり、例えば欧州では、キャリアの公式サイト以外にアクセスすると、定額料金が適用されないこともあるという。日本では公式サイトと非公式サイトどちらにアクセスしても通信料は変わらないが、これは「意図的にやっている」という。「1999年の時点ではURLの意味が分からない人が多かったので、ネットに慣れていない人は公式サイトを使ってくださいということ」(夏野氏)

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