「スマホってそもそも電話機だよね」からスタート――Windows Phone 7.5で変わることWindows Mobileとは別物(1/2 ページ)

» 2011年08月12日 22時18分 公開
[田中聡,ITmedia]

 日本マイクロソフトが8月12日、日本のメディア向けにMicrosoftの最新情報を提供する「マイクロソフト メディア エクスチェンジ」を開催。Windows Phone向けの最新OS「Windows Phone 7.5」(コードネーム:Mango)の位置付けやUI(ユーザーインタフェース)、Marketplaceでの取り組みについて説明した。

photophoto 世界初のWindows Phone 7.5搭載モデル「Windows Phone IS12T」

アプリではなく人を中心にデザインした「Peopleハブ」

photo 横井伸好氏

 Windows Phone 7.5の前身となるOSは「Windows Mobile」だが、両者のコンセプトは大きく異なる。日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマー&パートナーグループ コミュニケーションズ パートナー統括本部長の横井伸好氏は「Windows Mobileシリーズは、PDAから派生したPCのコンパニオンデバイスに電話の機能を付けたというもので、昨今の進化したスマートフォンとは位置付けが異なる。そこで、Windows Phone 7以降ではすべてのOSのデザインを見直し、全く新しい潮流として作り上げ、デザイン、機能、UIに必要なものを一から考えた。Windows Mobileとは全く違うもの」と説明する。

 Windows Phone 7の対応機種は2010年9月から欧米で11機種が発売され、Windows Phone 7.5では多言語化して日本語にも対応。世界初のWindows Phone 7.5端末として、7月27日にau向け「Windows Phone IS12T」(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製)が発表されており、9月以降の発売を予定している。横井氏は「発表以降、大きな反響を得ている。Windows 7を日本で発表したときと同じくらいの反響だった。ポジティブな意見をユーザーやパートナーさんからいただいている」と手応えを口にする。

photophoto Windows Mobile 5からWindows Phone 7.5までの軌跡(写真=左)。ビビッドなカラーが目を引くIS12T。発売は9月以降の予定(写真=右)

 Windows Phoneで注力したのは「人を中心としたコミュニケーション」「最新のクラウド端末」「全く新しい使いやすさと軽快さ」「プラットフォームエコシステム」の4点。

 人を中心としたコミュニケーションは「Peopleハブ」で体現されているが、これはどんな考えのもとに生まれたのだろうか。それはスマートフォンの定義が大きく関わる。MicrosoftがWindows Phone 7を手がけるにあたり、「“スマートフォンのOSを作る”ところからスタートした」という。つまり、MicrosoftにとってWindows MobileとWindows Phoneにおけるスマートフォンの定義が異なるわけだ。「スマートフォンとは何か? を考えたときに、小さいPCととらえる方もいるだろうが、そもそも電話機だよねと。じゃあ電話って何のためにあるのかを考えると、コミュニケーションを取るためにある。通話、メール、ソーシャルメディアなど多岐にわたるコミュニケーションをいかに効率よく行えるか。そこで、Windows Phone 7では“人”を中心にデザインした」と横井氏は説明する。「アプリではなく人を中心に置くのは、他のスマートフォンと一線を画する」と同氏は強調する。

 Windows Phoneは、常にネットワークとつながっている最新のクラウド端末でもある。「Windows Live、Office、Xbox LIVE、Facebook、Twitterなどのサービスはバックエンドのクラウドから提供し、クラウドとの親和性の高さを重視した」(横井氏)。UIについてはスタート画面のタイルや、横スクロールでコンテンツが展開されるパノラマUIなど、地下鉄の案内をモチーフにした「メトロUI」を採用し、言語が分からなくても目的の場所にたどり着けるよう工夫した。「メトロUIはWindows 8やMicrosoftのホームページにも取り入れている。これからのプロダクトデザインの大きな潮流になる」と横井氏は自信を見せる。詳細は後述するが、Microsoftはプラットフォームベンダーでもあり、Windows Phone向けアプリの開発者向けの支援も積極的に行っていく。

photophoto Windows Phoneの4つのコンセプト(写真=左)。Microsoftのビジョン(写真=右)
photophoto アプリではなく人を中心としたコミュニケーションを重視する
photophoto クラウドを意識せずに利用できる(写真=左)。使いやすい「メトロUI」を取り入れた(写真=右)

意識せずにクラウドサービスを使える

photo 石川大路氏

 日本マイクロソフト コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部 モバイルコミュニケーションズ本部 シニアエグゼクティブプロダクトマネージャの石川大路氏は、デモを交えながらWindows Phone 7.5の特徴的な機能を紹介。まずはPeopleハブについて。現在のスマートフォンではアプリ経由でSNSやメールでコミュニケーションを行う方法が主流だが、Peopleハブでは登録された「人」経由で電話、メール、SNSでのやり取りが可能。Windows Phone 7.5ではよく連絡を取る人のグループを作成する機能を追加。作成したグループはスタート画面に設置することもできる。

 Peopleハブに限ったことではないが、「最強のクラウド端末と言いながらも、クラウドを意識せずに使える」(石川氏)のも特徴の1つだ。例えばPeopleハブからFacebookのコメントを書き込んだり「イイネ!」を押したりする操作はインターネットに接続して行うものだが、Windows Phone 7.5ならFacebookアプリを立ち上げる必要がないので、ユーザーはアドレス帳をいじるような感覚でコミュニケーションできるわけだ。「(アカウント登録など)最初の設定は必要だが、それ以降はクラウドなのかケータイ内部のデータなのかを意識せずに情報へアクセスできる」(石川氏)

photophotophoto Peopleハブでは、電話、メール、Facebookへの書き込みなどを「人」ごとに行える(写真=左)。SNSの複数のアカウントを1つのデータとしてリンクできる(写真=中)。電話やメールの履歴も人ごとに表示される(写真=右)

 最初に現れるロック画面の使い勝手にもこだわり、画面下部に新着メールや予定のほか、音楽再生中に使える操作パネルも表示される。すでに写真記事でも紹介しているが、スタート画面には大きなタイルが表示され、左へフリックするとアプリやメニュー一覧がリスト表示される。スタート画面のアイコンはアプリのショートカットとして機能するのはもちろん、例えば「ぐるなび」の検索結果や飛行機のeチケットなど、Webブラウザの特定ページを画面メモとして貼り付けることもできる。「スタート画面は1軍、メニューリストは2軍」(石川氏)。頻繁に使うアプリや、すぐに呼び出したいメモなどをスタート画面に設置しておくと利便性が増すだろう。

photophotophoto ロック画面の下部に予定や新着メールの通知などが表示される(写真=左)。スタート画面には2列の大きなタイルが並ぶ(写真=中)。こちらはメニューリスト(写真=右)
photophoto 音楽再生中にロック画面に戻ると、音楽の操作パネルが上部に出る(写真=左)。ミュージックプレーヤーの再生画面(写真=右)

 Pictureハブでは端末で撮った写真はもちろん、友達がアップロードした写真を人物ごとに閲覧することも可能。SkyDriveやFacebookなどへのアップロードも簡単に行える。小技として、ロック画面が表示された状態でも、カメラキーを長押しするとロック解除せずにカメラを起動できる操作法も紹介された。

photophotophoto Pictureハブから手軽に写真をアップロードしたり、友達がアップした写真を見たりできる

 Officeハブでは各種Officeファイルの閲覧と編集ができ、端末内部やSkyDriveなどの保存先も自由に選べる。OneNoteに書き込んだ内容をPCで見たり、PCで書き込んだ内容をスマートフォンで見たりもできる。このように、端末内部とオンラインのファイルを一元管理できるので、「ユーザーはSkyDriveを使っていることを意識せずに利用できる」(石川氏)

 ブラウザはPCと同等の「Internet Explorer 9」を搭載し、「レンダリングスピードは業界最高峰。他社のOSでここまで出るものはない」と石川氏は自信を見せる。Flashの表示に対応しないのが惜しまれる。

 Microsoftの資産を生かすべく、「Xbox LIVE」とも連携し、対戦ゲームのメッセージやリクエストなども確認できる。音楽、写真、映像を一元管理できるZuneソフトウェアもPC向けに提供され、端末をPCに接続してデータの転送ができる。提供時期はIS12Tの発売後の予定。同ソフトはMicrosoftのWebサイトから無料でダウンロードできる。石川氏によると、iTunesなどに保存した音楽ファイルも自動で端末に転送されるという。Marketplaceで配信されているアプリも閲覧でき、PC版Android マーケットのように、PCからの操作で端末にアプリをダウンロードできる。

photophoto アバターも登場するXbox LIVE。音楽再生中にこの画面を起動すると、アバターが踊る仕掛けもある(写真=左)。対戦ゲームのメッセージやリクエストを確認(写真=右)
photophotophoto Zuneソフトから、アプリの閲覧やメディアファイルの管理が可能

アドレス帳の移行はどうする?

 Windows Phone IS12Tに乗り換える際に気になるのがアドレス帳の移行。IS12Tではアドレス帳の用途をPeopleハブが兼ねるわけだが、これまでケータイで使っていたアドレス帳の移行はできるのだろうか。auケータイユーザーの場合、au one アドレス帳とIS12T向け「アドレス帳移行ツール」を用いることで移行できる。auケータイでau one-IDを取得後、「au one アドレス帳」にデータをバックアップし、IS12Tでアドレス帳移行ツールを使うと、Peopleハブにアドレス帳のデータが移される。

 他キャリアのケータイやスマートフォンから移行する場合、アドレス帳のデータを1度CSVファイルに変換をしてからSkyDriveなどを経由してIS12Tに取り込む必要がある。Peopleハブに登録できるデータ数に制限はなく、32Gバイトの内蔵メモリの範囲内ならいくらでも登録可能だ。


100以上のデザインを検討した「カーブフリック」

photo 吉田剛厳氏

 日本向けの機能として、日本語入力システムにも注力した。ソフトウェアキーボードの日本語テンキーには「あ→い→う」など複数回押してかなを入力する「マルチタップ(トグル)」、キーを長押しするとガイドを表示する「フラワー」、4方向の「フリック」、そして他の入力システムにはない「カーブフリック」を採用した。カーブフリックでは濁点「゛」と半濁点「゜」付きのかなをワンフリックで入力できる。例えば「ふ」なら左上に半濁点、右上に濁点、「へ」なら右上に半濁点、右下に濁点が小さく現れる。キー全体を見ると、半濁点→かな→濁点が時計回りで配置されているのが分かる。

 マイクロソフトディベロップメント オフィス開発統括部 リードプログラムマネージャの吉田剛厳氏は「(濁点や半濁点を入力することで)フリック操作が中断すると、スムーズに入力できないと考えて搭載した」と開発の経緯を話す。ただ、このカーブフリックの実装は一朝一夕には進まず、フリックとそれ以外も含めて100以上のデザインスケッチを作り、社内のスタッフに試してもらいながら検討したという。ここまで細かく検討したのは、フリックする方向が増えたことで、従来の4方向のみのフリックに比べて入力の判定が厳しくなったため。さらに、人差し指よりも親指の方が(指が太いので)誤入力されやすいことも苦労に拍車をかけた。これらを加味し、「どのキーのどの方向が入力しにくいのか。角度やカーブの判定をチューニングした」。その結果、「かなりスムーズに入力できるようになった」と吉田氏は自信を見せる。

 あわせて、Microsoftはフリック操作の練習ができる「Text Text Revolution」というアプリを提供する。このゲームで入力されたフリック操作のデータを収集し、今後の改善に役立てる考えだ。

photophotophoto 日本語入力でこだわったポイント(写真=左)。テンキーボードで可能な入力方法。これら4つの機能は同時に利用できる。つまりキーによってトグル入力とフリック入力を使い分けたりできる(写真=中)。濁点と半濁点付き文字をワンフリックで入力できる「カーブフリック」(写真=右)
photophoto カーブフリック検討の過程で、キーによってうまくフリックできたり、できなかったりといった違いが判明した(写真=左)。フリック入力の練習ができるゲームアプリ「Text Text Revolution」(写真=右)


 予測変換機能にも工夫を施し、「Office IME 2010」ユーザーから1年間にわたって提供された約3億の入力単語を参考にして予測辞書を作り、精度を高めた。次単語予測には、IME開発に使用している例文データを活用したほか、単語間のつながり確率が高い組み合わせ、品詞に応じたつながり確率の高い助詞など(名前+さん、様なども含む)を辞書に登録した。吉田氏は「先日、箱根登山鉄道を利用したが、『箱根』と入力したら『箱根登山鉄道』が候補に現れた」と具体例を紹介した。入力された文を一時的に保管する機能もあり、入力履歴と予測辞書を融合することで、より円滑に変換できる。

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