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» 2010年01月28日 17時27分 UPDATE

元麻布春男のWatchTower:iPadは“でかいiPod touch”なのか、あるいは…… (1/2)

さまざまな憶測を呼んだAppleの「iPad」が、ついに発表された。この“薄い板”を前にして、まず筆者が連想したものは……。

[元麻布春男,ITmedia]

ボディサイズと重量はソニーの「VAIO X」に近い

og_ipad04_001.jpg Appleのイベントで「iPad」を紹介するスティーブ・ジョブズCEO

 2010年1月27日(現地時間)、昨年から世の中を騒がせてきたAppleのタブレット型デバイス「iPad」がついにベールを脱いだ。その概要については、ほぼ事前に予想された通りだ。ARM系のカスタムプロセッサ(Apple A4 1GHz)、マルチタッチをサポートした9.7型のIPS液晶ディスプレイ(解像度は1024×768ドット)、MacではなくiPhone/iPod touchと互換性を持つシステムソフトウェア、電子ブックリーダー機能など、特別驚くような点は見当たらない。3G通信機能がオプションになっていることもあり、“でかいiPod touch”という感じだ。もうひとひねりあるのではないか、と思っていた身としては、ちょっと肩すかしの感もある。

 実物を手にすれば、また印象が変わるのかもしれないが、発表された242.8(幅)×189.8(奥行き)×13.4(高さ)ミリというボディサイズ、約680〜730グラムという重量を見る限り、ソニーの「VAIO X」(サイズは278×185×13.9ミリ、重量は約655〜1080グラム)に近い物体と考えてよさそうだ。逆に、この薄さでクラムシェル構造のボディを採用し、フルピッチに近いキーボードを収納したVAIO Xは、ことハードウェアという点ではすごいかも、と改めて思わされる。液晶パネルもVAIO Xが11.1型と一回り大きく、解像度もiPadの1024×768ドットに対し、VAIO Xは1366×768ドットと広い。


 VAIO Xに近いのは大きさだけでない。VAIO Xの店頭モデル(VPCX118KJ/B)は、3G通信機能(FOMA HIGH-SPEED)に対応し、64GバイトのSSDを搭載する。iPadの最上位モデルも、やはり3G通信機能と64GバイトのSSDを搭載し、米国価格(税別)は829ドルとされている。現時点でのVAIO Xの市場価格(最安値ではない)は、10万円前後で10%の量販店ポイント還元が期待できるというところだから、10%前後のSales Taxを加えたiPad最上位モデルと結構いい勝負だ。通信機能がSIMロックされているかどうか(iPadはロックされていない)、64GバイトのSSDがシステムでどれだけ消費されているか(VAIO Xは30Gバイト以上がシステムで消費されている)といった違いはあるものの、かなり両者は似ている、と筆者は思った。

og_ipad04_002.jpgog_ipad04_003.jpg Appleの「iPad」(写真=左)とソニーの「VAIO X」(写真=右)

 違ってくるのは、ソフトウェアと使い方、そして提供されるサービスだろう。iPhoneのアプリケーションがそのまま動作するiPadは、当然システムソフトウェアとしてもiPhone OSの改良型を搭載しているはずだ。おそらくiPhone OSの制約(マルチタスクをサポートしない、現時点でFlashのサポートがないなど)の大半を引き継いでいるだろう。ちなみに、VAIO XのOSはWindows 7だ。


iPhone OSとWindows 7、どちらがユーザーフレンドリーか

og_ipad04_004.jpg 米国向けに発表されているAT&Tの3G料金プランは、250Gバイトで14.99ドル、無制限で29.99ドル。このほかAT&Tのホットスポットを無料で利用できる

 ユーザーにとって、iPhone OSとWindows 7のどちらがよいかは、一概にいうことができない。しかし、OS単体の機能としてどちらが優れているかといわれれば、その答えは間違いなくWindows 7だ。iPhone OSは、特定のアプリケーションを使い、コンテンツを利用する分には使いやすい(日本語入力については、とりあえず除外しておきたいところだが)し、分かりやすいが、アプリケーションの開発環境をMacに依存することでも明らかなように、PC用の汎用フルスペックOS(WindowsやMac OSなど)と比べるべきものではない。コンテンツの取り込みについても、MacやWindows PCとの同期が主流になるだろう。

 もちろん3Gデータ通信を利用して、単体でコンテンツを購入することも可能だろうが、米国で発表されているAT&Tの安価なほうの料金プラン(250Mバイトで15ドル)では、ムービー1本ダウンロードすることは難しいし、速度の点でもつらい。この250Mバイト/15ドルのプランで推測できることは、コンテンツの入手や同期はWiFiかPC経由、メールとWebのブラウズに3Gという使い分けをAppleは想定しているということだ(どうしても3Gで行きたい人?向けに、30ドルの無制限プランも用意されるが)。

 また写真の取り込みについても、単体で行うには別売のオプション(iPad Camera Connection Kit)を購入する必要がある。USBの標準コネクタはもちろん、SDメモリーカードスロットすらないハードというのは、よくも悪くもApple以外では考えられない。

まだまだ不透明な部分が多いiPad

 自らコンテンツを作成したり、直接デバイスから取り込む機能が著しく制限されていることでも明らかなように、iPadは子機あるいは端末としての用途が想定されており、PCやMacのコンパニオンデバイス、併用するアプライアンスである。VAIO Xもコンパニオン的なPCではあるものの、いざというときは親機になることもできる。この点が大きな性格の違いであり、個人的には829ドルのハイエンドモデルにいまひとつ魅力を感じない部分だ。

 筆者が買うとしたら、499ドルのローエンドモデルか、これに3Gを追加した629ドルのモデルだが、わが国では電子書籍やムービーの入手性が現時点で不透明だ。それを考えると、画面が大きな必然性(iPhoneよりiPadを選ぶ必然性)は米国よりはるかに低い。もちろん、iPodやiPhoneがそうであるように、動画を自分でエンコードすることは可能だが、それを行うには、多くのハードルを越えなければならない。大多数の一般ユーザーはそんな面倒なことは行わないだろう。iPhone SDKがあるのだから、必要なアプリは自分で書け、というのが非現実的であるのと同じことだ。電子書籍もムービーもアプリも、すぐに使える形で提供されなければならない。

og_ipad04_005.jpgog_ipad04_006.jpg 電子ブックリーダーとしての機能も目玉の1つ。ただし、コンテンツの販売に関する日本国内の状況はかなり不透明だ


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