携帯電話の機能を求めている人に――“ジャパニーズスタンダード”を注入した「006SH」「007SH」開発陣に聞く「006SH」「007SH」(2/2 ページ)

» 2011年09月06日 09時30分 公開
[田中聡,ITmedia]
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007SH向けアプリのキー対応は容易

 007SHは世界初の“折りたたみ型防水Android”でもあるが、006SHなどフルタッチ端末の防水対応は検討しなかったのだろうか。林氏は「静電式のタッチパネルだと画面が濡れると操作しにくくなりますが、キー付きだと濡れていても安心して使えるためです」と説明する。物理型のテンキーは水回りでの使い勝手にも貢献することが分かる。

photo 007SHの十字キーやソフトキー操作に対応した「ジョルテ」

 せっかく搭載した物理キーも、アプリの操作に対応していないと、その利便性も半減してしまうが、007SHのキー操作に対応したアプリもある。その1つがスケジューラーアプリの「ジョルテ」だ。「ジョルテはもともとキー操作に対応していませんでしたが、開発者に007SHを紹介したら、対応してくれました。007SHではAndroid 2.3標準で定義されているキーコードを使っているので、十字キーやソフトキーには容易に対応できます。(IS01やSH-10Bなど)Androidでは以前からポインティングデバイスでの操作はできたので、キー操作は基本的に対応しています。キーコードの情報は日本Androidの会を通じて開発者に提供しています」(林氏)

 さらに、ディスプレイを回転して閉じたビュワースタイルにすると、ディスプレイ下部のセンサーキーを使ってフルタッチ端末と同様に操作することもできる。「全画面で使う際のユーザビリティを損なわないために、どうすべきか考えました。(センサーキーではなく)物理キーを載せることも当初は考えましたが、本体サイズが長くなってしまうので、限られたスペースで苦労しましたが、センサーキーを入れました。幾度となく調整をした結果、誤って画面に触れてしまうなどの誤動作もなく、高い精度を実現できました」と林氏は苦労を話す。

photophoto サブディスプレイ横にある着信ランプがカラフルに点滅する(写真=左)。ディスプレイ下部にMENU/ホーム/戻るキーも付けた(写真=右)

100以上の項目をつぶして低消費電力を実現

 スマートフォンを使う上で気になるバッテリーについて、007SHでボディの小型化が影響してか、820mAhと容量の小さなバッテリーが採用されている。数字だけを見ると心もとないが、実際のところバッテリーの持ちはどうなのか。林氏は「バッテリーの容量=操作時間(の指標)ではありません」と強調する。「折りたたみ型の007SHは、そのスタイルから消費電力が低く設定されています。Android 2.3で全体的に低消費電力化を図っていることに加え、007SHは液晶サイズが比較的小さいので、003SHよりも消費電力は下がっています。ディスプレイの明るさを最適に調節することで、003SHから20%強の消費電力を削減できています。特に、ワンセグやYouTubeなどのアプリを操作しているときに効いてくるでしょう」(林氏)

 007SHでは物理キーを主な操作デバイスに使うことも低消費電力に貢献するという。その1つが文字入力。林氏によると、タッチパネルに比べ、キーを使って文字を入力する方が35%ほど消費電力が低かったという。ブラウジング時も同様で、キーでスクロールする方がディスプレイをフリックするよりも電力を抑えられる。007SHは折りたたみスタイルなので、使わないときにディスプレイを閉じればすぐにバックライトが消える。また、着信やアラーム鳴動時には、フルタッチ端末だと画面全体が点灯するが、007SHはサブディスプレイが点くのみで、「(消費電力に)8割くらいの差がある」という。

 「以前からバッテリーの容量が少ないという指摘は受けているので、省エネ化の対策として、項目を100ほど立てて1つずつつぶしています」と林氏が話すとおり、地道な作業の積み重ねで省エネ化に取り組んできた。これは006SHも同様だ。「普段使いをする上でバッテリーの減りは少なくなったと思います。ディスプレイの解像度が上がったので省エネの面では不利になりますが、それを補って余りある以上の対策を打っています。詳細はなかなか言えないところもありますが……」(林氏)

かゆいところに手の届く機能を強化

photo 簡易留守録に録音があると、ロック解除画面右下にアイコンが現れる

 スペック表やカタログでは確認しにくいが、006SHと007SHでは携帯電話の機能で日本人が好む“ジャパニーズスタンダード”にもこだわった。その1つが簡易留守録(伝言メモ)。フィーチャーフォンでは当たり前のように搭載されていた機能だが、スマートフォンでは非対応の機種が多い。端末内にメッセージ保存する簡易留守録はオフラインでも確認できるので、重宝する人も多いだろう。

 メールでは、アドレス帳に登録されていないアドレスから届いたメールを自動で振り分ける機能を利用できるので、迷惑メールの振り分けに役立つ。さらに、圏外エリアで作成したメールを圏内に入ると自動で送信してくれる「送信予約メール」や、受信メールに使われた絵文字を本文の背景に表示するアニメビューの3D表示、振り分けたメールのフォルダを非表示にする「シークレットメール」なども採用している。iWnnに搭載した手書き入力は、読みの分からない漢字を(Googleなどで)調べる際にも使える。メールを受信した際にはステータスバーに差出人の名前を表示するほか、発信履歴と着信履歴を別々に表示するなど、細かい使い勝手にもこだわった。

photophotophotophoto メールの3Dアニメビュー(写真=左端)。フィーチャーフォンではおなじみのメールの送信予約も可能(写真=左中、右中)。受信メールの差出人名がステータスバーに表示される(写真=右端)
photo アプリ一覧にホーム画面のサムネイルが表示され、ここからショートカットの設置が可能

 ホーム画面のUIも003SHや005SHから改善した。アプリ一覧からホーム画面にショートカットを置く際に、ホーム画面に切り替えることなく、(ホーム画面の)サムネイルにアプリをドロップするだけでショートカットを設置できるようになった。「サクサク動くよう、(ホーム画面の)アニメーションの描画スピードは60fps近く出ている」(河本氏)とのことで、003SHよりも速くなっている。

 ハイスペックと使いやすい機能が融合した006SH、ケータイと同様の操作性を実現した007SH。iPhoneは言うまでもなく、Samsung電子やSony Ericssonなど海外メーカーのスマートフォンが日本でも人気を集めているが、日本人向け機能の作り込みにはシャープに一日の長がある。スペックからは分かりにくいが、シャープのスマートフォンは、使うほどに心地よさを実感できるはずだ。

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