久々に覚えたワクワク感――Android普及の礎を築いた「Xperia」「GALAXY S」「IS03」ITmediaスタッフが選ぶ、2010年の“注目ケータイ&トピック”(編集部田中編)(1/2 ページ)

» 2010年12月30日 11時33分 公開
[田中聡,ITmedia]

 2010年は“ケータイ”に触れる機会が極端に減った。

 ここでいうケータイとは、スマートフォン以外の携帯電話(フィーチャーフォン)のこと。この企画でも多くのライター陣が言及しているが、2010年は日本で本格的にスマートフォンが投入され始めた年となった。筆者は仕事柄、複数キャリアの端末を所有しているが、初めて購入したスマートフォンが2009年に発売された「iPhone 3GS」で、それ以外はフィーチャーフォンを使っていた。それが2010年にはドコモは「Xperia」、auは「IS03」、ソフトバンクのもう1回線は「GALAPAGOS 003SH」に機種変更し、データ端末を除き、ついに所有している端末すべてがスマートフォンとなってしまった(一部は編集部の端末だが)。ちなみに「iPhone 4」はホワイトを買おうと考えていたが、発売が延期になり購入熱が冷めてしまったので、iPhone 3GSを使い続けている。

 記事を書いたり検証したりする上で、話題の機種に触れておかないといけないという事情もあるが、スマートフォンをここまで積極的に使おうと思えたのは、筆者の場合はiPhoneの功績が大きい。大きな画面に触れながら操作し、インターネットにすぐにアクセスできる――。シンプルだが、これが当たり前になるとフィーチャーフォンには戻れなくなる。毎日活用しているTwitterを、スマートフォンのアプリ経由で快適に利用できるのも大きい。ブラウザ、PCメール、Twitter(を含むSNS系アプリ)の利便性が、スマートフォンに替えてから飛躍的に増した。

 そんな中、2010年に自分の中でも存在感が増したのがAndroid端末だ。上記のスマートフォンを使う理由だけを考慮するとiPhone1台でも十分だが、今年発売されたAndroid端末の中には、iPhoneとは違ったワクワク感を覚えた機種がいくつもあった。

新しいコミュニケーションのあり方を提案した「Xperia」

photo ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「Xperia」

 まず挙げたいのがNTTドコモの「Xperia」だ。フルタッチ形状はiPhoneと同じだが、狭額縁設計を施した4インチの大画面、持ちやすさに注力したラウンドフォルム、側面のS字ラインなど、iPhoneとは違った感性に訴えるデザインが新鮮に映った(発売当時の日本ではiPhone以外にフルタッチ型のスマートフォンがなかった、ということもあるが)。

 機能面で興味を引いたのが、メールやSNSなどの履歴や最新情報を時系列で一括表示する「Timescape」だ。この類の機能は、今でこそ他社のスマートフォンでも当たり前になりつつあるが、当時は珍しかった。ユーザーの写真(アイコン)+ツイートやメッセージが記されたタイルがざざーっと表示されるUI(ユーザーインタフェース)も新鮮で、「使ってみたい」と思わせた。実際に使うと「mixiボイスは反映されない」「返信やRTができない」「表示件数が少ない」など不満もあったが、それでも新しいユーザー体験は享受できた。

 アドレス帳のデータ(ユーザー)ごとに、TwitterやFacebook、メールなどのコミュニケーション履歴を見たり、顔登録した写真を見られる仕組みも当時は新しかった。こちらも他社が追随したが、アドレス帳の新しい使い方を提案したという意味では大きな新機能だったと思う。

 TwitterやFacebookなどが浸透していく中で、複数のSNSを使い分けているユーザーが増えていることは想像に難くない。こうしたトレンドをいち早く察知し、コミュニケーションを軸にTimescapeや新しいアドレス帳をXperiaに盛り込んだことには好感を持てる。Xperiaを使ってから「コミュニケーションをもっと楽しみたい」と思えうようになった。

 Xperiaは発売当時はiモードメールが使えなかったが、9月に「spモード」が開始されて「@docomo.ne.jp」のメールアドレスが使えるようになり、バージョンアップ(関連記事12)を経て使い勝手も増していった。そして11月には待望のAndroid 2.1へのバージョンアップも可能になった(関連記事)。Android 2.2を備えるGALAXY Sの発売直後だったこともあり、2.1へのアップデートはタイミングが悪かった感もあるが、1世代後の端末に乗り換えたと思わせるほどのメジャーアップデートはユーザーにはうれしいもの。マルチタッチに対応しなかったのが惜しまれるが、ソフトウェアのアップデートだけでは限界があるのかもしれない。

photophotophoto コミュニケーションの更新情報を一括で見られる「Timescape」(写真=左)。iモードと同じメールアドレスが利用可能になった「spモードメール」(写真=中)。Android 2.1へのアップデートでさらに使い勝手が向上した(写真=右)

 もう1つ残念なのが、著作権保護されたWalkmanの音楽コンテンツをXperiaで共有できず、PCソフト「Sonic Stage」や「x-アプリ」もXperiaに対応していないこと。iTunesを使えるiPhoneはもちろん、IS03がLISMOに対応して、過去の着うたフルやLISMO Portにためた楽曲をIS03に転送できることを考えると不満を感じる。今後はWalkman連携の実現にも期待したい。

 個人的には、海外で発売された小型の「Xperia X10 mini」や、小型でQWERTYキーボード付きの「Xperia X10 mini pro」といったモデルが日本で登場するとさらに支持を集めると思うがどうだろう(関連記事)。GALAXY Sは9.9ミリという薄さをアピールしているが、これから日本で本格的にスマートフォンを普及させる上では「小型化」も1つの訴求ポイントになる。2011年には正統進化したハイスペックなXperiaはもちろん、その脇を固める兄弟機の登場にも期待したい。

photophoto 約50×83×16ミリ、約88グラムという小型軽量の「Xperia X10 mini」(写真=左)と、QWERTYキーボードを備えた「Xperia X10 mini pro」(写真=右)

日本展開の方向転換が功を奏した「GALAXY S」

photo Samsung電子製の「GALAXY S」。韓国での販売数は200万を突破した。ボディカラーはブラック1色のみだが、韓国で発売されているホワイトやピンクの追加にも期待

 2009年は海外メーカーの勢いが増したと感じたが、2010年はその勢いが市場に大きな影響を与えた。その台風の目となったのがSamsung電子の「GALAXY S」だ。今振り返ると、まさかこのモデルが“2010年に”日本で発売されるとは思わなかった。GALAXY Sが日本で初めて披露されたのは2010年の4月23日。Samsungのグローバルモデルの説明会ということで、この時点ではGALAXY Sの日本投入については「可能性がある」程度の言及に留まっていた。それが半年後には日本でドコモから発売されるに至った。もちろん日本向けにも周到に開発していたのだろうが、その決断とスピードに驚かされた。

 これまで日本で発売されていたSamsung電子のケータイといえば、ソフトバンクのOMNIAシリーズや、ドコモのWindows phone「SC-01B」などが記憶に新しい。いずれも日本向けのオリジナルモデルで、OMNIAは鮮やかな有機EL、SC-01Bは日本のケータイに合わせた操作法を採用する(関連記事12)など、ケータイやスマートフォンとしての完成度は高かったが、「何かが足りない」感もあり、いずれも大ヒットしたとは言い難かった。GALAXY Sは日本向けにある程度カスタマイズされているとはいえ、ベースはグローバルモデル。Samsung電子がこれまで日本に特化したモデルを開発していたことを考えると、GALAXY Sの投入は1つの大きな決断(方向転換)だったといえる。

photo GALAXY Sのボディは軽くて手にフィットしやすい

 GALAXY Sは4インチのスーパー有機ELや最新のAndroid 2.2を搭載、自社開発したCPUによりスムーズな操作を実現し、発売から2カ月経った今でも好調に売れている。ディスプレイの美しさはもちろんだが、実際に使ってみてあらためて効いたのが、厚さ約9.9ミリ、重さ約118グラムという薄くて軽いボディだ。GALAXY Sをポケットに入れて携帯していると、ポケットの中に端末が入っていることを忘れてしまうほどだった。

 ボディにアルミを採用して質感をアピールしたHTCの「HTC Desire HD 001HT」(約164グラム)とは対照的に、GALAXY Sは質感が乏しいのが少し残念だが、すべては薄さと軽さを優先させたと考えると納得がいく。GALAXY Sのデザインを担当したSamsung電子のリ・ミンヒョク氏は「ボディが軽いと落下したときに壊れるリスクが減る」と話しており、この考えも合理的だと思う。デザインや質感は好みの分かれるところだが、GALAXY Sは「長く使えるスマートフォン」の1つの答を示したといえる。

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