液晶ディスプレイを除いた基本スペックは、MID(Mobile Internet Device)向けのCPUであるAtom Z500シリーズを搭載したInspiron Mini 12を継承している。CPUはAtom Z530(1.6GHz)か同Z520(1.33GHz)で、チップセットにグラフィックス機能を統合したIntel SCH(システム・コントローラー・ハブ:Intel AF82US15W)を採用する。メインメモリは1Gバイト(DDR2 SDRAM)で、CPUとチップセット、そしてメモリチップが一体になったInspiron Mini 12と同じモジュールで提供されるため、購入後の増設などはユーザーレベルで行えない。
MID用のCPUを搭載していることでパフォーマンスが気になるところだが、1.8インチHDDを採用するInspiron Mini 12とは違い、2.5インチSerial ATA HDD(9.5ミリ厚)を装備することで体感速度は上々だ。また、Inspiron Miniシリーズの伝統であるファンレス仕様も受け継いでおり、動作音は皆無に近い。なお、このあたりの詳細は後編のベンチマークテストに譲る。
本機がほかのNetbook/低価格ミニノートPCシリーズと差別化が図られているのは、ユニークなBTOメニューだ。CPUを筆頭に、OSのWindows XP Home Edition(SP3)やUbuntu 8.04(デルカスタマイズ版:後日提供予定)、HDDやメモリ容量、日本語や英語キーボードの選択肢に加え、ワンセグやGPS機能(ともに内蔵タイプ)も後日対応ながら選べるのが特徴だ。さらに画面解像度も標準の1024×576ドットだけでなく、1366×768ドットとNetbook/低価格ミニノートPCでは最大クラスの大画面を選択できるのも特筆したい。
上記に加え、標準でHDMI端子(バージョン1.2対応)を備えることにより、同社では本機を「マルチメディアを持ち運べるネットブック」と位置付けている。底面前方にステレオスピーカーがあり、Realtek製のユーティリティでエフェクトを活用すれば、過度な期待は禁物ながらそれなりにサウンドが楽しめる。
インタフェースは左右両側面にまとまっており、左側面にケンジントンロック、DC入力、USB 2.0×1、SDメモリーカード(SDHC対応)/MMC/メモリースティックDUO対応のメモリカードスロット、右側面にヘッドフォン、マイク、HDMI、USB 2.0×2、有線LANの端子が並ぶ。試しに本機を東芝の液晶テレビ「REGZA」(42Z2000)にHDMI経由で接続したところ、問題なく1920×1080ドットで表示できた。なお、メモリカードスロットにSDメモリーカードを挿入すると14ミリほど、メモリースティックPRO DUO挿入時は6ミリほどカードが本体からはみ出す。
細かいところだが、実態に使っていて気になったのはPCやHDDの状態を表示するLEDランプがないことだ。前面左側に1つだけあるLEDランプは、PC起動時とバッテリー充電中に白く光り、スタンバイ時は白く点滅、バッテリー残量が残り少なくなるとオレンジ色に点滅するだけで心もとなく、ランプの光りが明るすぎるのも目に付いた。
標準で付属する3セルバッテリーの容量は11.1ボルト 24ワットアワーで、後日6セルの大容量バッテリーが提供される予定だ。3セルバッテリーの公称駆動時間は3時間5分となっており、実動作は約2時間程度となりそうだ。ちなみに、3セルバッテリーの実測値は約170グラムで、本体のみは約990グラムだった。
ACアダプタはInspiron Mini 12や同Mini 9と同じ形状で、サイズが33(幅)×90(奥行き)×59(高さ)ミリ、重量は約180グラムと軽量だが、ケーブルの長さが約255センチもあるので持ち運びには少々かさばる。
通信機能は100BASE-TX/10BASE-T対応の有線LANを標準で備え、IEEE802.00b/g/n(nはドラフト準拠)とIEEE802.00b/g、Bluetooth 2.1+EDRがオプションで選択可能だ。背面にはSIMスロットがあり、ワイヤレスWANモジュールも本体に内蔵できるようになっているが、日本国内での展開は現時点で未定だ。
2009年になってスリム化やデザイン重視のNetbook/低価格ミニノートPCが登場している中で、デルはエンターテインメント要素や高解像度を訴求したInspiron Mini 10を投入した。店頭モデルではOffice Personal 2007(SP1)をプリインストールしたモデルを最初から用意しているのも、従来モデルとは異なる方向性といえるだろう。価格も4万9800円からと手ごろで、何より1366×768ドットとこのクラスで大画面となる解像度も魅力だ。
レビューの後編では、パフォーマンスやバッテリー駆動時間などのテストを行うので楽しみにしてほしい。
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