評価機の構成は、1.6GHz駆動のAtom Z530(2次キャッシュは512Kバイト)、1GバイトのDDR2メモリ、容量160Gバイトの2.5インチHDD(9.5ミリ厚)、1024×576ドット表示の10.1型ワイド光沢液晶ディスプレイを搭載していた。またオプションのIEEE802.11b/g/n(nはドラフト準拠)とBluetooth 2.1+EDRを内蔵し、OSはWindows XP Home Edition(SP3)だった。無線LANなどのオン/オフスイッチは用意されず、ユーティリティで切り替える仕様だ。
Inspiron Mini 12と同じく、Menlow(開発コード名)のWindows XP用ドライバがシェーダをサポートしていないためPCMark05のスコアはすべて計測できなかったが、参考までにInspiron Mini 12や同Mini 9の結果(OSはいずれもWindows XP SP3で統一)をグラフにまとめた。総じて2.5インチHDDを搭載したInspiron Mini 10が良好なスコアを出しているが、基本的にNetbook/低価格ミニノートPCである点に変わりはなく、劇的な差は見られない。とはいえ、いずれもOSがWindows XP Home Edition(SP3)のため、動作はキビキビとしている。OSの起動時間は54秒程度で、休止状態への移行は18秒、休止状態からの復帰は24秒、スタンバイへの移行は4秒、同じく復帰は9秒と、スタンバイを除けばInspiron Mini 9と同Mini 12の中間となる成績を残しており、実用上は不満がない。
発熱や騒音については、Inspiron Miniシリーズ伝統のファンレス仕様もあって、耳障りな冷却ファンの風切り音は皆無で、アイドル時は底面がほんのり熱くなる程度で済む。システムに高い負荷をかけ続けると、CPUやチップセット、メモリが位置する底面右側が38度前後に達した(室温は25度)。いずれも熱くて触れないということはないが、HDDなどが位置する左側は33度前後と低いため、左右の温度差が気になった。
本機が備えるUS15Wのグラフィックス機能には、動画の再生アクセラレーションという武器があるのだが、試しにマイクロソフトの高精細コンテンツ ショーケースのページからダウンロードした1080pと720pの動画(The Discoverers)は、どちらも音声こそ再生されるが、1080pの映像は見るに堪えず、720pでもコマ落ちが目立った。ただ、YouTubeやニコニコ動画などを見ながらテキスト入力などは問題なく行えた。
テストに使ったInspiron Miniシリーズの主なスペック | |||
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モデル | Inspiron Mini 10 | Inspiron Mini 12 | Inspiron Mini 9 |
CPU | Atom Z530(1.6GHz) | Atom N270(1.6GHz) | |
メモリ | DDR2 SDRAM 1Gバイト | ||
ストレージ | 2.5インチHDD(160Gバイト) | 1.8インチHDD(80Gバイト) | 16GバイトSSD |
液晶ディスプレイ | 10.1型ワイド | 12.1型ワイド | 8.9型ワイド |
画面解像度 | 1024×576ドット | 1280×800ドット | 1024×600ドット |
バッテリー容量 | 11.1ボルト 24ワットアワー | 14.8ボルト 32ワットアワー | |
本体サイズ | W261×D182×H25.3〜28ミリ | W299×D229×H23.3〜27.6ミリ | W232×D172×H27.2〜31.7ミリ |
重量 | 約1.17キロ | 約1.24キロ | 約1.06キロ |
OS | Windows XP Home Edition(SP3) | ||
最後に、バッテリーの駆動時間を海人氏作のBBench V1.01を使って計測した。液晶ディスプレイの輝度を最高で電源設定をポータブル/ラップトップにしてWeb巡回(60秒間隔)とキーストローク出力(10秒間隔)をオンにしたところ、標準の3セルバッテリーは2時間18分で残量がゼロになった。公称の駆動時間が3時間5分となっており、輝度を下げたり、電源設定を変更したりすれば、より長時間の動作が可能だろう。
これまでのInspiron Miniシリーズは、コンパクトボディで持ち運びやすく、バッテリーの動作時間が長いものの入力環境には難があるMini 9、1280×800ドット表示の12.1型ワイド光沢液晶ディスプレイとスリムボディが魅力な半面、パフォーマンスが心もとないMini 12というラインアップだったが、その間をうまい具合に埋めるのが本機だ。同シリーズで最も充実した入力環境を持ち、ボディサイズが小柄かつHDD容量も豊富で、HDMI端子の標準装備をはじめ、ソニーの「VAIO type P」に迫るエンターテインメント寄りのBTOメニューも見逃せないところだ。
現状では、画面解像度が1024×576ドットとライバル機の中に埋没してしまいがちだが、BTOで1366×768ドットを選べば本機のユニークな立ち位置が明確になる。絶対的な性能やバッテリーの駆動時間でライバル機に見劣りする部分もあるが、後者は6セルバッテリーの装着でカバー可能だ。価格も4万9800円からと手ごろであり、これまでもひんぱんに価格改定を行ってきた同社の性格を考えると、今後の展開にも期待が持てる。
国内のNetbook/低価格ミニノートPC市場ではASUSや日本エイサーの後塵(こうじん)を拝しているデルだが、新モデルの投入によってどのような変化が生まれるのか、本機の動向から目が離せそうにない。
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