スマートフォンの性能を図るうえでは、どのプロセッサーが使われているかも重要だ。最近はデュアルコアCPUは標準的となり、4つのCPUコアを持つ「クアッドコア」搭載機も増えてきた。秋冬モデルではどんなプロセッサーを搭載しているのだろうか。

ドコモ12機種。上段左から「ARROWS Kiss F-03E」「ARROWS V F-04E」「Ascend HW-01E」「Optimus G L-01E」「Optimus LIFE L-02E」「MEDIAS U N-02E」、下段左から「Disney Mobile on docomo N-03E」「GALAXY Note II SC-02E」「GALAXY S III α SC-03E」「AQUOS PHONE si SH-01E」「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」「Xperia AX SO-01E」(写真=左)。au11機種。上段左から「G'zOne TYPE-L CAL21」「ARROWS ef FJL21」「HTC J butterfly HTL21」「DIGNO S KYL21」「Optimus G LGL21」、下段左から「VEGA PTL21」「GALAXY S III Progre SCL21」「AQUOS PHONE SERIE SHL21」「Xperia VL SOL21」「iPhone 5」(写真=右)秋冬モデルは全機種がデュアルコア以上のCPUを搭載し、シングルコアのモデルは見当たらなくなった。一昔前まではシングルコア搭載機も珍しくなかったが、最近の新機種は、いずれもデュアルコア以上が標準になりつつある。
チップベンダーは大半がQualcommで占められている。アプリケーションプロセッサーは、「ARROWS V F-04E」に採用されている「Tegra 3」(NVIDIA製)や、「GALAXY Note II SC-02E」「GALAXY S III α SC-03E」に採用されている「Exynos4412」(Samsung電子製)など他社製のチップもあるが、通信用のベースバンドチップはARROWS Vを除きQualcomm製だ。ARROWS Vには、ドコモや富士通が共同開発した通称「サクラチップ」が搭載されている。「iPhone 5」にはアプリケーションプロセッサーには自社開発の「A6」を採用しているが、ソフトバンク向けiPhone 5のベースバンドチップはQualcommの「MDM9615」であることが判明している。au版iPhone 5のベースバンドチップもQualcomm製のものである可能性が高い。LTE対応機が増えたことで、Qualcommの存在感がさらに増していることが分かる。なお、今回の秋冬モデル26機種では、Texas Instrumentsの「OMAP」は1機種も採用されていない。
2012年夏モデルでは、QualcommのLTE対応チップセット「Snapdragon S4 MSM8960」を搭載したモデルが急増した。アプリケーションプロセッサーとベースバンドチップが1チップになり、28ナノメートルの製造プロセスで省電力性にも優れていることもあり、多くのメーカーから引く手あまたとなった。その反面、チップの供給が需要に追いつかず、「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」や「Xperia GX SO-04D」など、潤沢な数をそろえられなかった夏モデルも見られた。秋冬モデルでもMSM8960を搭載するモデルは多いが、チップの製造工場を増やすなどの施策が功を奏してか、ここ最近は同チップが不足しているという話は聞かない。秋冬モデルでMSM8960を搭載するのは、ドコモが「ARROWS Kiss F-03E」「Ascend HW-01E」「Optimus LIFE L-02E」「MEDIAS U N-02E」「AQUOS PHONE si SH-01E」「Xperia AX SO-01E」、auが「G'zOne TYPE-L CAL21」「ARROWS ef FJL21」「DIGNO S KYL21」「VEGA PTL21」「GALAXY S III Progre SCL21」「Xperia VL SOL21」、ソフトバンクが「STREAM 201HW」「MOTOROLA RAZR M 201M」「PANTONE 6 200SH」であり、約60%にも及ぶ。ソフトバンクの3機種はTD-LTEと互換性のあるAXGP通信に対応している。MSM8960はTD-LTEもサポートしていることから、AXGPにも対応できた形だ。
2012年秋冬モデルでは、Qualcommのクアッドコアプロセッサーを搭載したモデルが登場した。4つのコアを駆使することで、大容量ゲームをストレスなく楽しめたり、高精細な動画をスムーズに閲覧できたりと、デュアルコアよりも高い性能が期待される。ドコモの「Optimus G L-01E」「Disney Mobile on docomo N-03E」「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」、auの「Optimus G LGL21」「HTC J butterfly HTL21」は「APQ8064」を搭載。ベースバンドチップはドコモの3機種がW-CDMA対応の「MDM9215」、auの2機種がCDMA2000対応の「MDM9615」または「MDM9615M」を別途搭載している。MDM9215とMDM9615は第2世代のLTEチップであり、いずれも3GとLTE通信をサポートしている。LGL21の「MDM9615M」は微妙に製品名が異なるが、チップとしての性能はHTC J butterflyのMDM9615と変わらない。
日本向けスマートフォンにおけるクアッドコアの先陣を切ったTegra 3は、冬モデルではARROWS Vのみが搭載。夏モデルで同じくTegra 3を搭載した「ARROWS X F-10D」と「ARROWS Z ISW13F」は、バッテリーの持ちが相対的に悪く、ベンチマークテストのスコアも低いなど、Tegra 3の能力を最大限に生かせていない印象もあったが、ARROWS Vはどうか。同じくクアッドコアを搭載するソフトバンクの春モデル「ARROWS A 201F」が、Tegra 3ではなくAPQ8064を採用しているのは興味深い。また、GALAXY Note IIとGALAXY S III αは、自社製のクアッドコアプロセッサー「Exynos4412」を搭載している。現在、クアッドコアプロセッサーとLTEチップを1チップ化させた製品はリリースされていないが、QualcommはクアッドコアCPU搭載の1チップ製品も開発中なので期待したい。
| NTTドコモ | ||||
|---|---|---|---|---|
| メーカー | 製品 | クロック周波数 | CPUコア数 | |
| ARROWS Kiss F-03E | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| ARROWS V F-04E | NVIDIA | Tegra 3+サクラチップ(ドコモなど) | 1.5GHz | クアッド |
| Ascend HW-01E | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| Optimus G L-01E | Qualcomm | Snapdragon APQ8064+MDM9215(Qualcomm) | 1.5GHz | クアッド |
| Optimus LIFE L-02E | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| MEDIAS U N-02E | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| Disney Mobile on docomo N-03E | Qualcomm | Snapdragon APQ8064 | 1.5GHz | クアッド |
| GALAXY Note II SC-02E | Samsung電子 | Exynos4412+MDM9215(Qualcomm) | 1.6GHz | クアッド |
| GALAXY S III α SC-03E | Samsung電子 | Exynos4412+MDM9215(Qualcomm) | 1.6GHz | クアッド |
| AQUOS PHONE si SH-01E | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| AQUOS PHONE ZETA SH-02E | Qualcomm | Snapdragon APQ8064+MDM9215(Qualcomm) | 1.5GHz | クアッド |
| Xperia AX SO-01E | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| au | ||||
| メーカー | 製品 | クロック周波数 | CPUコア数 | |
| G'zOne TYPE-L CAL21 | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| ARROWS ef FJL21 | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| HTC J butterfly HTL21 | Qualcomm | Snapdragon APQ8064+MDM9615(Qualcomm) | 1.5GHz | クアッド |
| DIGNO S KYL21 | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| Optimus G LGL21 | Qualcomm | Snapdragon APQ8064+MDM9615M(Qualcomm) | 1.5GHz | クアッド |
| VEGA PTL21 | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| GALAXY S III Progre SCL21 | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| AQUOS PHONE SERIE SHL21 | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| Xperia VL SOL21 | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| iPhone 5 | Apple | A6 | 非公表 | デュアル |
| ソフトバンク | ||||
| メーカー | 製品 | クロック周波数 | CPUコア数 | |
| STREAM 201HW | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| MOTOROLA RAZR M 201M | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| PANTONE 6 200SH | Qualcomm | Snapdragon MSM8960 | 1.5GHz | デュアル |
| iPhone 5 | Apple | A6+MDM9615(Qualcomm) | 非公表 | デュアル |
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佐藤卓氏デザイン監修:写真で解説する「Optimus LIFE L-02E」
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クアッドコアになりました:写真で解説する「GALAXY S III α SC-03E」
写真で解説する「AQUOS PHONE si SH-01E」
写真と動画で解説する「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」
写真で解説する「Xperia AX SO-01E」(外観編)
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IS11CAから“ここ”が変わった:写真と動画で解説する「G'zOne TYPE-L CAL21」
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本当に“ひとめぼれ”する?:写真と動画で解説する「HTC J butterfly HTL21」
充実の通知パネル:写真で解説する「DIGNO S KYL21」
“ホワイト”もあります:写真で解説する「Optimus G LGL21」
手かざし操作に対応:写真で解説する「VEGA PTL21」
ストラップホールもあります:写真で解説する「GALAXY S III Progre SCL21」
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