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» 2014年07月16日 20時29分 公開

「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ NAD11」の登場で思うこと/進むSIMロック解除とSIMロックフリー端末投入ルータープリンスの「5分で知る最近のモバイル通信&ルータ事情」(1/2 ページ)

NECアクセステクニカ(現NECプラットフォームズ)製のWiMAX 2+対応モバイルWi-Fiルーター「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ NAD11」が登場。総務省はSIMロック解除を義務付ける方針だが、一方でメーカー主導でSIMフリー端末販売の流れも加速している。

[島田純,ITmedia]
「ルータープリンスの「5分で知る最近のモバイル通信&ルータ事情」」バックナンバー

WiMAXハイパワー、IEEE 802.11ac対応のモバイルWi-Fiルーター「NAD11」が登場

 WiMAX 2+対応のモバイルWi-Fiルーターは、対応機種が「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」(以下、HWD14)のみという状況が、サービス開始以来長い間続いていた。そんな中、第2弾のWiMAX 2+対応モバイルWi-Fiルーターとして登場したのが、NECプラットフォームズ製のモバイルWi-Fiルーター「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ NAD11」(以下、NAD11)だ。

photo WiMAX 2+対応のモバイルWi-Fiルーター第2弾「NAD11」

 NECプラットフォームズ(旧NECアクセステクニカ)は、「Aterm WM3800R」など、WiMAX対応のモバイルWi-Fiルーターを多数製造しており、WiMAXサービスにおいてはシンセイコーポレーションと並んで主要メーカーだったので、同社製品を使ったことのある人も多いだろう。

 NAD11は、WiMAXハイパワー(WiMAXの電波が弱いエリアでも通信品質が安定する機能)や、クレードルと連携したホテルや固定回線との接続、Bluetoothを利用したリモート起動などに対応しており、充実の機能を誇る。さらに、最新の無線LAN規格であるIEEE 802.11acでの通信にも対応する。NAD11が対応する周波数の関係上、屋内での利用に限られるものの、5GHz帯を利用したWi-Fiでの通信は、2.4GHz帯と比べて通信速度と品質が安定する。

 WiMAX 2+対応のモバイルWi-Fiルーター「HWD14」では使えない多くの機能をサポートしているので、既存のWiMAXユーザーがWiMAX 2+に乗り換える端末の有力候補になるだろう。

 一方で、HWD14ではサポートされていた「ハイスピードプラスエリアモード」には対応していないので、WiMAX 2+よりもエリアが広いLTE通信は利用できない。WiMAX 2+対応エリアは、東名阪から徐々にエリア拡大を続けており、6月末の時点で札幌、仙台、広島、福岡の一部がエリア化されているものの、より広いエリアをカバーしているLTEの「プラチナバンド」に対応していない点には注意が必要だ。

 それでも、既存のWiMAXユーザーがWiMAX 2+対応機種への乗り換えを考えた場合、WiMAXハイパワーへの対応や、クレードル連携に対応しているのは大きなメリットといえる。

 NAD11がハイスピードプラスエリアモードに対応していれば「死角なし」といえるかもしれないが、厚さ8.2ミリは同社製のモバイルWi-Fiルーターとしては過去最薄で、モバイルWi-Fiルーターとしても国内最薄タイ(Mobile Slimも同様に8.2ミリ厚)のコンパクトな端末に仕上がっている点を見ても、スペック面での魅力は非常に高い。

 実際に筆者もNAD11を購入して利用したが、HWD14と比べて高速移動中でもWiMAXが切れにくくなっていることが実感できた。しかし、建物の中や、電車などの交通機関で移動中には思ったほどWiMAX 2+でつながらず、WiMAXでつながることも多かった。

 電波強度や通信の混雑状況によって最適なネットワークは異なるので、必ずしもWiMAX 2+に接続することが、WiMAX接続よりも快適とは限らないことは付け加えておきたいが、せっかくのWiMAX 2+対応機種でもWiMAXに接続されている時間が長いのは少し寂しくも感じる。

photo WiMAX 2+対応エリア内でもWiMAX接続されることもある

 WiMAXに接続されている状態に限っていえば、「Aterm WM3800R」や「URoad-Aero」などのWiMAX 2+非対応機種と比べて特に大きなメリットがあるわけではない。NAD11への乗り換えは、生活圏内でWiMAX 2+エリアがどれほど充実しているかを見てからでも遅くはない。

 端末そのものとは関係がないが、WiMAX 2+には現在「機種変更」に相当する選択肢がなく、例えばHWD14を使っている人がNAD11を使いたいと思っても、契約中の通信事業者から端末だけを購入することは原則できなくなっている点も、今後何らかの形で改善されることを願いたい。

 一方、UQコミュニケーションズはWiMAX 2+の通信速度を現行の下り最大110Mbpsから下り最大220Mbpsへ高速化すること予定しており、対応端末は2014年度中に投入される予定だ。この高速化を見据えると、「いつWiMAX 2+を契約すれば良いのか」が難しい問題となる。「新機種が出るたびに新規契約する」というシンプルな解決方法もあるが、費用負担が大きくあまり現実的とはいえないだろう。

 NAD11の発売後、しばらくしてAmazonでNAD11の端末単体(契約を必要としない白ロム)が発売され、価格が1万円未満と安いこともあってか在庫切れとなってしまった。現在もAmazonでのUQによる販売は終了または一時中断しており、マーケットプレイスに登録されている一部の販売店が取扱いを継続しているものの、価格は3万円前後と、UQの販売価格よりも高い。

photo Amazonでは販売開始後、すぐに在庫切れとなった

 Amazonで販売されたNAD11には、オンラインで契約するためのSIMカードが同梱されているので、端末の単体販売が主な目的ではなかったようだが、今後計画されている下り最大220Mbps対応端末の投入のタイミングなどで、機種の追加購入や買い換えができるようなメニューの提供を望みたい。

WiMAX 2+契約者向けの公衆無線LANサービスが7月25日に開始

 新機種追加が大きなトピックスとなったWiMAX 2+サービスだが、公衆無線LANサービスにも注目したい。

 UQは、地下鉄駅や空港で利用できる「UQ Wi-Fi」に加えて、Wi2と同じエリアの「UQ Wi-Fiワイド」を追加料金なしで提供していた。一方、WiMAX 2+向けにはこれらの公衆無線LANサービスが提供されておらず、WiMAXユーザーがWiMAX 2+へ乗り換えるうえで1つのハードルになっていた。

 そこでUQは、7月25日からWiMAX 2+向けに「UQ Wi-Fiプレミアム」を提供し、追加料金なしでWi2エリアで公衆無線LANサービスが利用できるようになる。UQは、同サービスの提供開始に合わせて、スマートフォンやPC向けに提供されている専用接続アプリ「UQ Wi-Fiコネクト」のバージョンアップを予定しており、アプリを利用することで毎回ログインID、パスワードを入力する必要がなくなる。

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