第1回 基本スペックが充実/持ちやすいスマートフォンは?――36機種を横並び比較最新スマートフォン徹底比較(2011年度冬春モデル編)(1/4 ページ)

» 2012年02月17日 19時24分 公開
[田中聡,ITmedia]

 2011年は、新発売される携帯電話の主役が従来のフィーチャーフォンからスマートフォンに本格的に移行した1年だった。2011年秋から2012年春にかけて発売された、または発売予定のスマートフォンは全キャリア合わせて実に40機種を超え、逆にケータイの新機種数はスマートフォンの半分にも達していない。KDDIからも発売されたiPhone 4Sをはじめ、Xperia、GALAXY、AQUOS PHONE、ARROWS、MEDIAS、LUMIX Phoneなどのスマートフォンブランドを、複数のキャリア向けに展開する動きも多く見られるようになった。

 これだけの数のスマートフォンが一気に投入されると、どれを選ぶべきか迷う人も多いだろう。もちろん詳細なスペックは公開されているが、それらを見比べて検討するだけでも一苦労だ。同じキャリア間ならまだしも、キャリアを越えて比較するとなると、なおさらだろう。商戦期ごとに掲載しているこの比較レビュー記事でも、秋冬モデルと春モデルで分けてまとめたいところだったが、冬と春モデルの発売間隔が短いことに加え、春商戦では前年の秋冬モデルも併売されるため、今回は2011年秋冬モデルと2012年春モデルをまとめて比較する。今回は2011年10月から2012年1月末までに発売された34機種と、「Xperia NX SO-02D」「Xperia acro HD SO-03D」を加えた計36機種を取り上げることにした。2011年夏モデルの比較で取り上げたモデルが18機種なのでちょうど2倍(!)になる。春商戦での機種選びの一助になれば幸いだ。第1回では基本スペックを中心にまとめた。

 本レビューで取り上げるモデルは以下のとおり。なお、Xperia NXとXperia acro HDは試作機で検証している。

photophoto NTTドコモのスマートフォン。左上から「F-03D Girls'」「ARROWS X LTE F-05D」「ARROWS μ F-07D」「Optimus LTE L-01D」「PRADA phone by LG L-02D」「MEDIAS PP N-01D」「P-01D」「LUMIX Phone P-02D」「GALAXY S II LTE SC-03D」「GALAXY NEXUS SC-04D」「AQUOS PHONE SH-01D」「AQUOS PHONE slider SH-02D」「Xperia NX SO-02D」「Xperia acro HD SO-03D」「REGZA Phone T-01D」(写真=左)。auのスマートフォン。左上から「ARROWS Z ISW11F」「ARROWS ES IS12F」「DIGNO ISW11K」「HTC EVO 3D ISW12HT」「Optimus X IS11LG」「MOTOROLA PHOTON ISW11M」「MEDIAS BR IS11N」「AQUOS PHONE IS13SH」「AQUOS PHONE IS14SH」「iPhone 4S」(写真=右)
photophoto ソフトバンクのスマートフォン。左上から「HONEY BEE 101K」「MEDIAS CH 101N」「LUMIX Phone 101P」「AQUOS PHONE THE HYBRID 101SH」「AQUOS PHONE 102SH」「AQUOS PHONE 103SH」「STAR7 009Z」「iPhone 4S」(写真=左)。イー・モバイルのスマートフォン。左から「GS02」「Sony Ericsson mini(S51SE)」(写真=右)
photophoto

基本スペック:デュアルコアCPU搭載機が増加

 まずはOSについて見ていこう。auとソフトバンクのiPhone 4S以外はいずれもAndroid OSを採用したモデルだ。OSはAndroid 4.0のリードデバイスであるGALAXY NEXUSを除き、いずれもAndroid 2.3だが、ソニー・エリクソンは2011年以降に発売したXperiaシリーズを、シャープはハイエンドモデルのAQUOS PHONEを、HTCも2012年初頭にHTC EVO 3DなどをAndroid 4.0にバージョンアップすることを明言しているので、今回取り上げたAndroid 2.3端末のいくつかは4.0へのアップデートが期待できそうだ。

 チップセット(またはアプリケーションプロセッサ)はほとんどが海外メーカー製。AndroidではQualcomm製の「Snapdragon」(MSMxxxxやAPQxxxx)、Texas Instruments製の「OMAP」、NVIDIA製の「Tegra 2」などが主に使われており、iPhone 4SにはAppleが開発したチップセット「A5」が使われている。現行のスマートフォンではまだ対応機種が少ないが、国内メーカーではルネサス エレクトロニクスの「R-mobile APE5R」が101Kに採用されている。ちなみに、101KのベースバンドチップにはLTEモデムに対応した「MP5225」が搭載されており(もちろん101KはLTEには対応していないが)、同チップを備えたLTE端末が今後登場するかもしれない。2つのプロセッサコアにより処理を分散できる「デュアルコアCPU」は、2011年夏モデルでは「GALAXY S II SC-02C」のみ備えていたが、秋冬モデルから一気に対応機が増え、今回の36機種中、20機種がデュアルコアCPUを備えている。処理速度の速さを示すクロック周波数は、Optimus LTE、GALAXY S II LTE、Xperia NX、Xperia acro HDの1.5GHzが最も高い。

 続いてボディサイズと重さを見ていこう。スマートフォンはディスプレイが大きいので必然的にサイズも大柄になり、片手で操作しにくいモデルも多い。個人的には幅60ミリ前後なら問題ないが、60ミリ台後半ともなると、片手で操作し続けるのは難しく感じる。Optimus LTEとGALAXY NEXUSは幅68ミリ、PRADA Phone、GALAXY S II LTE、GALAXY S II WiMAXは幅69ミリと太いので、両手での操作を強いられることが多そうだ。厚さはほとんどのモデルが10ミリ前後とスリムだが、スライドボディのSH-02D、IS14SH、101SHは15ミリほどでやや厚い。

photo 今回取り上げた機種の中で特にコンパクトなP-01DとSony Ericsson mini

 この中で最もスリムなのは、最薄部6.7ミリを実現した富士通製のARROWS μ(ドコモ向け)とARROWS ES(au向け)。いずれも同じハードウェアを用いた兄弟機だ。ちなみに、世界最薄のスマートフォンは、Huaweiが1月に発表した厚さ6.68ミリの「Ascend P1 S」とされており、わずか0.02ミリの差でARROWS μ/ESは世界最薄の座を逃したことになる。ただ、Ascend P1 Sはまだ発売されていないので、発売中のスマートフォンではARROWS μ/ESが世界最薄と言えるだろう。最もコンパクトで軽量なのはSony Ericsson miniだ。52×88×16ミリというサイズは一般的なケータイよりも小さく、99グラムも十分軽い。次いで約105グラムのARROWS μ/ESも軽い。一方、最も重いのは約171グラムのHTC EVO 3Dで、110グラム前後のモデルと比べるとかなりのヘビー級だ。次いで約158グラムのMOTOROLA PHOTONも重い。

photo 左がARROWS ES、右がSony Ericsson mini。最も厚いのも実はSony Ericsson mini(厚さ約16ミリ)。ARROWS μ/ESの6.7ミリより約2.4倍厚い

基本スペック
NTTドコモ
OS チップセット サイズ(幅×高さ×厚さ) 重さ
F-03D Girls' Android 2.3.5 MSM8255(1.4GHz) 約59×121×10.9(最厚部約11.4)ミリ 約120グラム
ARROWS X LTE F-05D Android 2.3.5 OMAP4430(1.2GHzデュアルコア) 約64×129×9.8(最厚部約9.9)ミリ 約124グラム
ARROWS μ F-07D Android 2.3.5 MSM8255(1.4GHz) 約64×127×6.7(最厚部約8.5)ミリ 約105グラム
Optimus LTE L-01D Android 2.3.5 APQ8060(1.5GHzデュアルコア 約68×133×10.7(最厚部約11.4)ミリ 約140グラム
PRADA phone by LG L-02D Android 2.3.7 OMAP4430(1.0GHzデュアルコア) 約69×128×8.9(最厚部約9.1)ミリ 約138グラム
MEDIAS PP N-01D Android 2.3.5 MSM8255(1.4GHz) 約63×128×10.9(最厚部約11.4)ミリ 約135グラム
P-01D Android 2.3.4 MSM8255(1GHz) 約55×110×12.8(最厚部約12.8)ミリ 約117グラム
LUMIX Phone P-02D Android 2.3.5 OMAP4430(1.0GHzデュアルコア) 約64×123×10.2(最厚部約12.4)ミリ 約128グラム
GALAXY S II LTE SC-03D Android 2.3.6 APQ8060(1.5GHzデュアルコア 約69×130×9.5(最厚部約10.8)ミリ Dark Gray:約130グラム、Cearmic White:約134グラム
GALAXY NEXUS SC-04D Android 4.0.1 OMAP4460(1.2GHzデュアルコア) 約68×136×8.9(最厚部約11.5)ミリ 約138グラム
AQUOS PHONE SH-01D Android 2.3.5 OMAP4430(1.0GHzデュアルコア) 約65×128×9.7(最厚部約11.2)ミリ 約138グラム
AQUOS PHONE slider SH-02D Android 2.3.5 MSM8255(1GHz) 約57×121×14.5(最厚部約15)ミリ 約155グラム
Xperia NX SO-02D Android 2.3.7 MSM8260(1.5GHzデュアルコア 約64×128×10.6ミリ 約144グラム
Xperia acro HD SO-03D Android 2.3.7 MSM8260(1.5GHzデュアルコア 約66×126×11.9ミリ 約149グラム
REGZA Phone T-01D Android 2.3.5 OMAP4430(1.2GHzデュアルコア) 約64×129×8.8(最厚部約9.8)ミリ 約120グラム
au
OS チップセット サイズ(幅×高さ×厚さ) 重さ
ARROWS Z ISW11F Android 2.3.5 OMAP4430(1.2GHzデュアルコア) 約64×128×10.1(最厚部約10.7)ミリ 約131グラム
ARROWS ES IS12F Android 2.3.5 MSM8655(1.4GHz) 約64×127×6.7(最厚部約8.5)ミリ 約105グラム
DIGNO ISW11K Android 2.3.5 MSM8655(1.4GHz) 約65×128×8.7(最厚部約11.1)ミリ 約130グラム
HTC EVO 3D ISW12HT Android 2.3.4 MSM8660(1.2GHzデュアルコア) 約65×126×12.3(最厚部約13.5)ミリ 約171グラム
Optimus X IS11LG Android 2.3.7 Tegra2(1.2GHzデュアルコア) 約64×118×9.9(最厚部約10.2)ミリ 約130グラム
MOTOROLA PHOTON ISW11M Android 2.3.4 Tegra2(1GHzデュアルコア) 約67×127×12.2(最厚部約13)ミリ 約158グラム
MEDIAS BR IS11N Android 2.3.5 MSM8655(1.4GHz) 約59×119×11.9(最厚部約12.6)ミリ 約122グラム
GALAXY S II WiMAX ISW11SC Android 2.3.6 C210(1.4GHzデュアルコア) 約69×133×9.5(最厚部約11)ミリ 約139グラム
AQUOS PHONE IS13SH Android 2.3.5 MSM8655(1.4GHz) 約65×132×8.9(最厚部約10.9)ミリ 約132グラム
AQUOS PHONE IS14SH Android 2.3.5 MSM8655(1.4GHz) 約56×117×14.7(最厚部約15.4)ミリ 約136グラム
iPhone 4S(au) iOS 5.0.1 A5(デュアルコア) 約58.6×115.2×9.3ミリ 約140グラム
ソフトバンク
OS チップセット サイズ(幅×高さ×厚さ) 重さ
HONEY BEE 101K Android 2.3.4 APE5R(1.2GHzデュアルコア) 約56×117×13.4ミリ 約133グラム
MEDIAS CH 101N Android 2.3.5 MSM8255(1.4GHz) 約63×128×11ミリ 約133グラム
LUMIX Phone 101P Android 2.3.5 OMAP4430(1.0GHzデュアルコア) 約64×123×9.8(最厚部約12.4)ミリ 約128グラム
AQUOS PHONE THE HYBRID 101SH Android 2.3.5 MSM8255(1GHz) 約53×112×15.6ミリ 約129グラム
AQUOS PHONE 102SH Android 2.3.5 OMAP4430(1.0GHzデュアルコア) 約65×128×9.8ミリ 約137グラム
AQUOS PHONE 103SH Android 2.3.5 MSM8255(1.4GHz) 約61×123×10.4(最薄部約9.8)ミリ 約120グラム
STAR7 009Z Android 2.3.4 MSM8255(1GHz) 約62×125×12ミリ 約152グラム
iPhone 4S(ソフトバンク) iOS 5.0.1 A5(デュアルコア) 約58.6×115.2×9.3ミリ 約140グラム
イー・モバイル
OS チップセット サイズ(幅×高さ×厚さ) 重さ
GS02 Android 2.3.5 MSM8255T(1.4GHz) 約61.5×122×10.9(最厚部約11.5)ミリ 約134グラム
Sony Ericsson mini(S51SE) Android 2.3.4 MSM8255(1GHz) 52×88×16ミリ 約99グラム
※スペックは2012年2月17日時点のもの。

iPhone、GALAXY、Xperia……キャリア違いの兄弟機も増加

 先述のとおり、1ブランドのマルチキャリア化により、キャリア違いの兄弟機も増えている。iPhone 4SとARROWS μ/ESのほかは、MEDIAS PP(ドコモ)とMEDIAS CH(ソフトバンク)、AQUOS PHONE SH-01D(ドコモ)と102SH(ソフトバンク)、LUMIX Phone P-02D(ドコモ)と101P(ソフトバンク)、Xperia acro HD SO-03DとIS12Sには共通のハードウェアが用いられている。Androidの兄弟機は本体色やロゴなどが異なるが、iPhone 4Sはau/ソフトバンク版ともに筐体のデザインやカラーはまったく同じで、画面を消灯していると区別がつかない。ARROWS X LTE(ドコモ)とARROWS Z(au)は富士通/富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製の同系統となるハイエンド機だが、キー形状やデザインなど、筐体の作りはやや異なる。GALAXY S II LTEとGALAXY S II WiMAXも同じGALAXY S IIシリーズだが、ディスプレイ解像度(LTEはワイドVGA、WiMAXはHD)やサイズ/重さなどが異なる。ちなみに、auのAndroidスマートフォンにはすべて裏面にGoogleロゴがプリントされている(GALAXY NEXUSは、グローバルモデルにはあったGoogleロゴが、ドコモ版では外されている)。101KやF-03D Girls'、IS11Nなど、ローティーンや女性にターゲットを絞ったスマートフォンも目立つようになった。

photophoto 左がau、右がソフトバンク版のiPhone 4S。本体色やデザインは同じだ
photophoto 富士通製のARROWS X LTE、T-01Dと富士通東芝製のARROWS Z。ディスプレイやカメラなど共通部分は多いが、デザインは異なる(写真=左)。LG製のOptimus LTEとOptimus X。Optimus Xの方がコンパクトだ(写真=右)
photophoto ARROWS μ(左)とARROWS ES(右)。ロゴの種類や位置が異なるだけでデザインは共通だ
photophotophoto こちらはMEDIAS3兄弟(3兄妹?)。左からMEDIAS PP、MEDIAS BR、MEDIAS CH。PPとCHは共通のデザインだが(写真=右)、BRのみ異なりボディが小さく、キーも物理型が採用されている
photophotophoto LUMIX PhoneのP-02D(左)と101P(右)。カメラ部分を強調した裏側のデザインは共通だ(写真=左、中)。AQUOS PHONEのハイエンドモデルSH-01D(左)と102SH(右)(写真=右)
photophotophoto GALAXY S II LTE(左)とGALAXY S II WiMAX(右)。パーツの位置は共通だが(写真=右)、ホームキーの形状や筐体の高さなどが異なる。WiMAXのauロゴが新鮮だ
photophoto 女子向けスマホのF-03D Girls'(左)と101K(右)。キー、カメラ、スピーカーなどの装飾が凝っている

 「スマートフォンでもテンキーを使いたい」というニーズに応えるべく、シャープはドコモ、au、ソフトバンク向けにテンキー付きのスライド端末を供給している。ドコモ向けのSH-02Dは3機種の中で最も大容量の1370mAhバッテリーを内蔵するほか、無接点充電「Qi」や防水に対応していることもあり、ボディは最も重い155グラム。ソフトバンク向けの101SHは1020mAhというバッテリー容量に不安を覚えるが、丸くてコンパクトなボディは持ちやすい。au向けのIS14SHは2011年夏モデル「AQUOS PHONE IS11SH」のマイナーチェンジモデルだが、主なターゲットである女性層のニーズを考えると、3機種で唯一非対応の防水性能は加えてほしかった。3機種とも十字キーの左右から発着信履歴やアドレス帳の閲覧ができるほか、発話/終話キーもあり、物理キーから電話操作が可能。十字キー(左右下)と左上/右上ソフトキーに好きなアプリを割り当てるショートカット機能も用意した。キー配列はSH-02Dと101SHはほぼ共通だが、SH-02Dは発話/終話キーが左右ソフトキーの真下にあるほか、文字の削除キーが十字キーの真下ではなく左側にある。ケータイでよくある配列とも異なり、初めて操作すると戸惑うかもしれない。

photophoto 左からSH-02D、IS14SH、101SH。いずれもシャープ製モデルだが、ボディやキーの形状が異なる。SH-02Dの発話/終話キーと削除キーの配列は、IS14SH・101SHとは異なる
photophotophoto 3機種とも十字キーやソフトキーに任意のアプリを割り当てられるショートカットを用意(写真=左、中)。IS14SHには、検索キー+ダイヤルキーから呼び出せる「クイック起動」設定もある(写真=右)

 スマートフォン市場での巻き返しを図るメーカーにとって、マルチキャリア展開はシェア獲得のための1つの打開策といえる。これまでiPhone一辺倒の感が強かったソフトバンクモバイルも、101Kを実質0円で販売、Android 4.0搭載の「AQUOS PHONE 104SH」を予約開始と同時に実機を展示するなど、Android端末の普及に力を入れ始めた。もとより機種数の多いドコモ、「選べる自由」をうたうauの端末戦略を考えると、今後もスマートフォンブランドのマルチキャリア化は加速するだろう。

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