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» 2014年01月06日 16時00分 公開

次期Windows「Threshold」続報──Microsoftは新OSでどう挽回するのか鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8.1」

前回、Windows 8.1に続く次期OSの開発コード名「Threshold」について紹介したが、以後も次々と関連情報が出てきている。以前の記事で検証不足として見送った話題も含め、再度Windowsを取り巻く最新情報を整理しよう。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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Windowsはさまざまなニーズを拾い上げるべき

 前回掲載した「次期Windowsは2015年春登場? 開発コード名「Threshold」とは」でも紹介したように、米国が誇る巨大ソフトウェア企業のMicrosoftは「One Microsoft」をキーワードに、複数あるWindows OSの統合を進めている。その成果とも呼べるのが「Threshold」ということになる。

 実際「Windows」「Windows RT」「Windows Phone」とMicrosoftがプラットフォームごとに分散したOS環境をまとめていきたいという意図は随所にみられる(Windowsストアの統合がいい例だ)。PC向けのWindows OS以外の勢力が弱く、連携も弱いことからWindows本来の強みも生かせていない現状はあるが、コスト的にも3つのプラットフォームにそれぞれ開発リソースやマーケティング予算を投入するより「1つの統一されたプラットフォーム」というメッセージを打ち出したほうが力強いのは確かだ。

 だが適材適所という言葉があるように、単純に同じWindowsをすべてのデバイスに搭載すればいいわけではない。スマートフォンに搭載するにはWindows OSはサイズが大きすぎるし、適切ではない。だからこそWindows Phone(Windows Mobile)があり、さらにWindowsに近い仕組みとしてのWindows RTも用意された。またユーザーインタフェースについても同様のことが言える。

 ただ、現在のWindows 8/8.1はどっちつかずの印象を受けるのも確かだろう。従来のPCスタイルでデスクトップUIを中心に作業するユーザーには余分な操作が要求され、逆にタッチデバイスとして利用するなら何かの折に突然出現するデスクトップUI画面の操作(タッチよりマウス+キーボード操作がやりやすいため)で手間取ることになる。筆者としては、現時点「両方取り」の解は存在しないと考えるので、「One Microsoft」という目標こそあれどあくまで適材適所で製品を当てはめていくのがベターだと考える。

1つのコアと複数のSKU

 こうした中で出てきた開発コード名:Thresholdに関する新情報が、以前も登場した米ZDNetのMary Jo Foley氏の「More on Microsoft's SKU-morphic Windows vision」という記事だ。こちらは具体性が不明瞭だったので前回のリポートでは紹介しなかったのだが、同氏は「Microsoft's Windows future: One core, many SKUs」という記事で「1つのOSコアに、たくさんのSKU」というWindowsの将来計画について説明している。市場にはいくつものニーズがあり、これを余さずカバーすることが既存顧客を多く抱えるMicrosoftにとってとても重要なため、当面の間、おそらくは同社が目指すべき道だと感じる。ゆえに用途ごとに別のインタフェースを持ったWindowsが登場するというのはその意味で理にかなっている。

 Foley氏が情報筋の話として紹介したところによれば、次期Windowsは主に3つのSKUがリリースされる可能性がある。ここでのSKU(Stock Keeping Unit)とは、「1つのWindows製品に対するバリエーション/エディション」のことを意味しており、次の3つのバリエーションが考えられるようだ。

  • Modern Consumer
  • Traditional Consumer
  • Traditional Enterprise

 Modern Consumerとは、タッチ中心のModern UIを備えた現行のWindows 8/8.1の延長線上にあるものと思われる。Traditional Consumerは従来のデスクトップUI中心のSKUで、よりWindows 7に近いものと想定する。Modern UIやWindowsストアへのアクセスも可能だが、キーボード/マウス操作中心ユーザー向けの最新Windowsといったつくりである。最後のTraditional Enterpriseもキーボード/マウス操作が中心だが、より企業ユーザーを意識したグループポリシーや管理機能が強化されるイメージだろう。

 ポイントは、従来型のデスクトップUI環境を望むユーザーが依然として多い──が示唆されていること。もう1つはTraditional Enterpriseにみられるように、企業ユーザーのフォローがさらに重視されている点だ。もしTraditional Consumerで本当にデスクトップUIがメイン環境となった場合、「デスクトップ上でModern UIアプリがフロートウィンドウで動作」、そして「スタートメニューの(本当の意味での)復活」を示唆しているのはWindows SuperSiteのPaul Thurrott氏だ。実際にどうなるかはもちろん不明だが、もし本当にこのアイデアを採用するのであれば、Win32からWinRTへのAPI移行を視野に開発に時間を割いてきたMicrosoftにとって、WinRT APIアプリが仮想マシンのように動作する環境にどんな思いを抱いているのだろうか。

エンタープライズを攻略せよ

 企業向け施策の話も重要だ。エンタープライズの世界において、現在Microsoft最大のライバルはAppleでもGoogleでもなく、ほかでもないMicrosoft自身だ。

 2014年4月にWindows XPのサポートが終了するが、Net Applicationsの2013年11月時点のデータによれば、同OS利用者はいまだ全体の3割近くも存在する。大手企業ではすでにWindows 7以降のOSへのシフトも進んでいると思うが、更新されずに残るXPマシンもまだまだ多いと思われ、複数OSをサポートしなければならないサービス事業者にとっても、そして古いOSが攻撃の踏み台になる可能性が考えられるセキュリティ業界にっても極めて頭の痛い問題だ。

 企業が新環境に移行しない理由は、単純なライセンス更新やハードウェア置き換えコスト以外にいくつも考えられるが、中でも厳しいのが、既存のアプリケーションやシステムが新環境でも動作するのかを検証する手間、そしてWindows 8/8.1で大きく変化してしまうユーザーインタフェースだと思われる。前者については移行において必ず必要なものとしても、後者の問題は末端利用者(つまり一般社員など)の教育コストや時間にも跳ね返ってくる。このため、Windows 8/8.1がすでにあるにも関わらず、企業ニーズは現時点リスクがより低いWindows 7を選ぶ例が多く、乗り換えプランを提示するサポートベンダー各社も、最新提案ではWindows 8よりWindows 7を提案するケースが多い。参考までにXP対策手段の1つであるクラウド・デスクトップサービスのAmazon WorkSpacesも、選択可能なベースOSはWindows 7となっている。

 Windows XPサポート終了問題もさることながら、本来の意味でWindows 7の後継となる製品の提案において、Microsoftはかなり苦慮していると思われる。

 例えば、(これはコンシューマー寄りの話ではあるが)先日、「Windows 7プリインストールPCの販売期限」に関する話題での混乱がみられた。当初2014年10月30日で提供を打ち切ると告知されていたものが、2013年12月末現在、未定となった。同社は初出時の日付にミスがあった説明しているが、ともあれ、Windows 8が企業ユーザーの心を掴み切れていないことでWindows 7の扱いにも困っている印象を受けた。前述した想定SKU「Traditional Enterprise」は時代に逆行する施策にも思えるが、本来の意味での企業ユーザーのニーズに応えるために必要なのかもしれない。

MicrosoftがOSを無料化する?

 最後に、Thresholdに関して流れてきた話題で目を惹いたのが、The Vergeの「Microsoft considers free versions of Windows Phone and Windows RT to battle Android」という記事だ。

 簡単にいえば「AndroidやiOSに負けていて、競争力が微妙なので、Windows RTとWindows Phoneのライセンスを無料にして対抗しましょう」という話だ。ただ、個人的には「ライセンスで食べているソフトウェア企業が製品を無料にしてどうするのかな」とこちらは否定的だ。「ハードウェアを売ってサービス群を囲って利益を得るApple」「プラットフォームを広めてサービスと広告で稼ぐGoogle」に対し、Microsoftは、自社製品/サービスにSurfaceとBingなどはあるものの、現時点では対抗できる状態ではない。

 なお、Windows RTは対応デバイスがまだほとんど普及していないため、売上に占める比率はそれほど高くない。Windows Phoneについては、シェアの大部分を占めるNokiaがMicrosoft傘下に入ることでライセンスビジネスとして成立は難しくなる。またWindows Phone自体の問題として、OSがミッドレンジ以上のハードウェアを想定しているため、いわゆる50〜100USドル以下の新興国向け需要をライセンスビジネスでカバーするのはライセンス料がコストの多くを占めてしまうため難しく、こうした分野ではAndroidやオープンソース系OSのほうが有利なのは明白だ。実際、Microsoftによる買収の話がとりざたされてからも、NokiaがAndroidベースの低価格スマートフォンを開発しているという噂はある。Microsoftとの提携がYahoo!の売上貢献率で3割に達したという話題もあるが、Google型のビジネスに傾くのはまだ難しいだろう。

 最近、Microsoftが「ソフトウェアのライセンス」というビジネスモデルで苦慮しつつある場面が増えていると感じる。

 以前、こちらで触れたように、7〜10型クラスのWindows 8.1タブレットでのOfficeバンドルライセンスをとても低価格(実質ほぼ無料)に設定することで、Officeをプリインストールした小型Windowsタブレットが多数市場で販売されている。

 これは、従来のライセンス価格体系では安価な小型タブレットに占めるOS/Officeのライセンス料金の割合が増えてしまい、iPadやAndroidと比べて価格的に不利に働くためだ。ライセンス料を一気に下げたことで「Officeまで付いてこの価格」というポイントはユーザーにとってはメリットだが、同時に「ソフトウェアのライセンス料金で稼ぐ」という同社のウィークポイントが露呈する結果になったとも筆者は考える。

 コンシューマーとエンタープライズでニーズは違えど、これまでの蓄積や実績が逆にあだになっている印象のある昨今のMicrosoft。「Threshold」でこの状況をどう打破するだろうか。


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