「Windows RT」、「8」とは何が違うんでしたっけ?鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8」

» 2013年05月27日 17時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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Q:「Windows RT」って何? Windows 8とどう違うの?

photo Windows RTを搭載する「Surface RT」

 Windows RTは、Windows 8と同じユーザーインタフェースを持つ、タッチパネル+ARM搭載モバイル機器向けのOSである。

 Windows 8との違いは、

  • 「ARMアーキテクチャ」を採用するマシンで動作する
  • Officeが標準で付属する
  • x86/x64アプリケーションは動作しない
  • 単体販売はなし

 など。ユーザーインタフェースこそWindows 8とほぼ同じだが、従来までのWindows用ソフトウェア(x86/x64アプリケーション)は動作しない──のが特に大きな違いになる。



photo Windows 8のシステム構成図。このうちWinRT APIを中心に、Win32を除く部分をWindows RTではサポートする

 改めて、Windows RTは組み込み機器、そしてスマートフォン/タブレットですでに馴染みあるものになりつつある「ARMアーキテクチャ」──で動作するWindowsを目標に、Microsoftが開発したOSだ。操作方法もWindows 8と同等で、Windows 8で採用された「WinRT API(Windows Runtime API)」をサポートし、Windowsストアから「Windows 8スタイル(旧:Metroスタイル)」のアプリをダウンロードして、それらを“ほぼ”利用できる。

 “ほぼ”としたのは、プロセッサの違いやパフォーマンスなどの問題から、アプリによっては対応しない/非対応として公開される可能性があるためだ(以前、定番Windowsストアアプリを紹介した通り、定番どころはおおむねARM/Windows RTも対応しているが)。

 また、従来のWindowsソフトウェア(x86/x64アプリケーション)は動作せず、Windowsストア経由以外でのアプリ追加・入手も原則として行えない。その代わり「Office 2013 RT」という、Word 2013 RT、Excel 2013 RT、PowerPoint 2013 RT、OneNote 2013 RTを包括したオフィススイートが標準で含まれている。

photo フランス・ニース渡航時に見かけた、Windows RT搭載「Surface RT」の街頭広告。撮影日当日はこれ以外に新聞広告から駅の装飾までSurface RT一色だった

 Windows RTのもう1つの特徴は、OSとして単体提供されることはなく、必ずハードウェアにプリインストールされた状態で提供されることだ。日本での主要モデルは、まずマイクロソフトの「Surface RT」がある。Surface RTはNVIDIA「Tegra 3」というモバイル向けのARMプロセッサを搭載した10.6型サイズのWindowsタブレットである。自立可能なスタンド(キックスタンド)を内蔵し、また純正の専用キーボード「Touch Cover」「Type Cover」も用意することで、iPad(iOS)やNexus 7(Android)など他OS搭載タブレットとはキーボード入力=作成・創造環境も重視したポイントを同社は推している。

 また、ラインアップはなかなか増えないが……ほかにもASUS「VivoTab RT TF600T」、NEC「LaVie Y」といったRT搭載マシンもある。VivoTab RT TF600Tも着脱可能なキーボードドックをオプションで用意し、タブレットとノートPC、双方のニーズをある程度カバーできるのが特長。LaVie Yは360度回転ディスプレイの機構を備え、普段はノートPC、折りたたんでタブレット──として使えるよう、機構にひと工夫がなされている。

photophoto Windows RT搭載コンバーチブルタブレット「LaVie Y」

 これらは、機能的にはタッチ操作の部分も含めてSurface RTとほぼ一緒だが、“もっと”ノートPC的な使い方ができる──という部分でアピールポイントに少し違いがある。Surface RTでカバーキーボードを使うには机などしっかり安定する場所へ置いて使う必要があるが、VivoTabやLaVie Yなど通常スタイルのキーボードが利用できるなら、普通のノートPCと同じようにヒザの上など若干不安定な場所でも比較的容易に扱える。

 では、Windows 8に対してWindows RTを使うメリットは何か。

 低消費電力性が特徴のARMプロセッサを採用する機器ということで、やはり全体的に省電力性=モバイル性や長時間動作性能に重点を置いた設計となっているのが強みだ。バッテリー動作時間は現時点でも10時間クラスを実現し、ボディも薄型軽量化を推進しやすい。Webサイト表示、ブラウザで動作するWebアプリケーション、メールを中心にPC+インターネットサービスを活用するための機器とするのに十分な性能を備え、そして(マクロやアドインなど、通常(x86版)のOffice比で一部非サポートとなる機能はあるが)「純正のMicrosoft Office付き」である点が大きなメリットとして挙られる。

 一方のデメリットは、やはり「とはいえ、これまでのWindowsソフトウェアは動作しない」ことだ。また、現時点のラインアップにおいては本体内蔵ストレージが32G〜64Gバイトほどと一般Windows PC比でとても少なく、さらにアプリケーションも入手しにくい。プリインストール以外のアプリケーションの導入はWindowsストア経由に限られ、やはりこれまでWindowsベースで運用していた業務ソフトウェアもそのままでは利用できない(もちろん、ARM対応版、あるいはWebアプリ版などを別途作成する、あるいは別途通常のWindows PCを用意し、リモートアクセス/リモートデスクトップ機能を用いるなどの方法はある)。Windowsという名称こそ冠しているが、これまでのWindowsとはソフトウェア上の一貫性がない点はなかなか残念だ。

 とはいえ、このデメリットさえ把握していれば割り切って使える魅力あるデザインのタブレットであり、その優れた携帯性と合わせてもっと活用できるようになる可能性は十分に残している、と思う。今後のWindowsストアの拡充しだいといえる。


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