あまり知られていない話かもしれないが、POSやKIOSK/ATM端末、デジタルサイネージなど、情報表示をメインとした端末装置におけるWindows OSのシェアは、コンシューマー分野におけるWindowsのそれよりもさらに高い比率といわれている。最近ではデジタルサイネージでもLinux系OSを採用するケースを見かけるが、特にPOSに関してはWindowsで構築されたシステムのシェアは100%に近い水準だという話もある。
ゆえに小売店系のイベントではMicrosoft+Intelという組み合わせのブース展示を見かけることも珍しくない。Microsoftではこうした用途向けにWindows Embeddedという組み込み用OSをリリースしているが、実際にはライセンス価格等が理由で汎用(はんよう)のWindowsが利用されているケースも多く、以前に連載でも紹介した「Windows XPのサポート切れ問題」に直面している端末が世界中に多数あるといわれる。
海外ではHewlett-Packard(HP)やDell、国内ではNEC、富士通、東芝、日立といったベンダーが同OSを組み込んだ端末や、それと連携するシステム、関連サービスを用意しており、リテールテックでもブース出展が行われていた。
今年は、いかにも「キャッシュレジスターです」といわんばかりの端末だけでなく、いわゆる「mPOS」の形態を持つWindowsタブレットの展示を多数見かけた。小型プリンタやカード読み取り機といった周辺機器と組み合わせ、より設置スペースの小さいシステムを紹介するのが狙いだ。
こうした中、会場でmPOS展示を行っていたフライトシステムコンサルティング代表取締役社長の片山圭一朗氏に興味深い話を聞いた。同社は日本でもかなり早い時期から「ペイメントマスター」と呼ばれるmPOSシステムで市場参入しており、iPhone向けのカード読み取り専用ジャケットの提供のほか、iPhone/iPadを使ったPOSや連携のための周辺機器を用意していた。
従来のサービスはiOSデバイス向けだったが、今年1月からはWindows 8用のアプリケーションも発表し、mPOSのWindows対応を積極的に推進していく予定だ。同氏によれば、顧客からのWindows対応の要望が多く、それを受けての動きだったという。
理由をいくつか挙げていたが、まず前述のようにPOSやバックエンドで連携するアプリケーションは現状多くがWindows上で動作しており、mPOSだからといってiOSやAndroid以外の需要がないわけではないということだった。
そして、これは日本特有の事情かもしれないが、POSシステムを納入するベンダーがデバイスの割引販売を積極的に行ってユーザーと交渉する際に、iPhoneやiPadでは扱いづらく、商材としてはこれまで扱ってきたWindows製品のほうが向いているのだという。初期にiPhone/iPad対応で注目を集めたmPOSだが、市場の拡大と中堅・大手への遡上(そじょう)が始まるにつれ、Windowsタブレットの見直しが始まっているようだ。
同様の話はフライトシステムコンサルティングだけではなく、他のmPOSソリューションを展示しているブースでも聞けた。まず顧客の要望が広がっており、従来のiOS対応だけでなく、AndroidやWindowsへの対応を至急進めている段階だという。
Androidは今後も引き続きビジネス分野でのシェアを拡大していく可能性があるが、同時にこれまでWindowsがあまり注目されていなかった分野でも、既存のシェアや実績を背景に利用が広まっていくことになるのかもしれない。
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