LTEの異なる周波数帯に同時接続し、通信速度を改善する「キャリアアグリゲーション」をKDDIが開始した。ドコモも2014年度内に提供することを告知。通信速度のさらなる高速化と安定化に期待ができそうだ。このほか、ドコモは6月1日に複数のドコモ回線でデータ通信量をシェアできる新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を発表。一方、MVNOによる格安データSIMもサービス内容が拡充しており、こちらからも目が離せない。
KDDIは「LTE-Advanced」の技術であるキャリアアグリゲーションを日本で初めて導入し、下り最大150Mbpsのサービスを開始した。同社は2013年8月から、LTEの2.1GHz帯を利用した下り最大150Mbps対応サービスを一部のエリアにて提供しているが、キャリアアグリゲーションの導入によって、下り最大150Mbpsの対応エリアが拡大する。
auのキャリアアグリゲーションは、2.1GHz帯の10MHz幅と、800MHz帯の10MHz幅の2つの帯域を重ねて利用することで、下り最大150Mbpsの通信速度を実現する。すでに提供中の2.1GHz帯の20MHz幅による基地局とあわせて、下り最大150Mbpsに対応する基地局数は2015年3月末までに20,000局へと拡大予定だ。キャリアアグリゲーションは、auの2014年夏モデルから対応し、最初に発売された「GALAXY S5 SCL23」は、ソフトウェアアップデートにより対応した(→KDDI、「GALAXY S5 SCL23」のソフトウェアアップデートでキャリアアグリゲーションとWiMAX 2+に対応)。
2014年3月期の決算発表会でドコモの加藤薫社長は、2014年度中にキャリアアグリゲーションを導入することを発表した(→下り最大225Mbps、ドコモが「LTE-Advanced」を2014年度中に開始)。ドコモのキャリアアグリゲーションでは、下り最大225Mbpsの高速化を予定しており、auの下り最大150Mbpsはもちろん、UQコミュニケーションズがWiMAX 2+で2014年中に展開を予定している下り最大220Mbpsよりも高速になる見込みだ。
ドコモはすでに、東名阪エリアにて1.7GHz帯の20MHz幅を使った下り最大150Mbps対応サービスを提供開始している。理論上の通信速度ではauのキャリアアグリゲーションと同じだが、イー・アクセスが2013年9月に行った実証実験では、KDDIが採用するキャリアアグリゲーションと同様の10MHz幅+10MHz幅よりも、連続した20MHz幅の帯域を使った方が高速という結果が発表されている(→イー・アクセス、1.7GHz帯 20MHz幅のLTE実証実験で下り291Mbpsを記録)。
LTE対応に対応する基地局数は2015年3月末までに9万5300局まで増加し、そのうち約40%にあたる4万局を下り最大100Mbps以上の速度に対応する計画だ。2014年3月末時点でLTEの対応基地局数が5万5300局、下り最大100Mbps以上に対応する基地局が3500局とわずか6%程度だったので、下り最大100Mbps以上に対応する基地局を1年間で一気に10倍以上に拡大する計画だ。
ドコモは2014年6月1日から新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を提供する。国内初となる音声通話の完全定額をiモード端末なら月額2200円、スマートフォンは月額2700円(いずれも税別)で提供する。
新料金プランで発表された「シェアパック」では、同一の家族内で最大10回線のデータ通信量を分け合って使用できる。パケットパックの定額料金は10Gバイトで9500円(各種割引前)からとなっており、家族で使用中のドコモの回線が多い場合は、データ通信料の値下げも可能になる。
プラン名 | 利用可能データ量 | シェア | 料金 | |
---|---|---|---|---|
1人向け | データSパック | 2Gバイト | 1人でシェア可能 | 3500円 |
データMパック | 5Gバイト | 5000円 | ||
家族向け | シェアパック10 | 10Gバイト | 家族で10回線までシェア可能 | 9500円 |
シェアパック15 | 15Gバイト | 1万2500円 | ||
シェアパック20 | 20Gバイト | 1万6000円 | ||
シェアパック30 | 30Gバイト | 2万2500円 | ||
らくらくスマートフォン向け | らくらくパック | 200Mバイト | 不可 | 2000円 |
個人向けのデータ通信オプションは、通信量が2Gバイトまでの「データSパック」(月額3500円)と、5Gバイトまでの「データMパック」(月額5000円)が提供される(いずれも税別)。音声回線と同一名義でデータ通信回線を利用する場合は、データ通信回線で「シェアオプション」を契約し「2台目プラス」を適用すると、音声回線とデータ通信回線でパケット通信量をシェアできる。
新料金プランでは、音声通話の完全定額とデータ通信量のシェアのほか、25歳以下の若者向けに通信料を割引したうえで、通信量がボーナスとして毎月1Gバイト付与される「U25応援割」や、長期契約者向けにシェアパックの定額料金が最大で毎月2000円割引される「ずっとドコモ割」が提供される。これらは、若者とドコモの長期契約者に向けた期間限定のキャンペーンではなく、恒常的に提供されるものだ。
モバイルWi-Fiルーター向けの料金としては「データプラン」をモバイルWi-Fiルータで利用した際の基本使用料が1200円(2年契約時、税別)で、シェアオプションの料金と合わせても、1700円(税別)となり、データ通信を行う回線が増えても、基本料金部分での負担は従来の料金プランと比べて小さくなる。
ただし、ドコモのMVNOでサービスを提供している「OCN モバイル ONE」では、1契約で使えるSIMカードを追加する「容量シェアSIM」を、月額450円(税別)で提供していることを考えると、ドコモの新料金プランのデータ通信向けプランの「基本使用料」とは、何に対する対価なのだろう、と考えてしまう。
新料金プランの発表直後は、新しいシェアパックの料金が割高に感じたものの、同居家族を合わせて合計2人という筆者のパターンでも、新料金プランの方が通信料を抑えられることが分かったので、新料金プランへの変更を予定している。新料金プランは5月15日から申込みを受け付けており、6月1日から提供される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.