MicrosoftはWindows 8.1の発表において「ポートレートモードの改良」を同OSの主要な改良点に挙げている。ポートレートモードとは、機器を縦位置で使用するスタイルのことだ。冒頭で挙げたiPad mini、Nexus 7、Kindle Fireは、それぞれ基本ポジションとしてこのポートレートモードを想定しており、これは各製品の広報写真や正面カメラ/物理ボタンの位置などから理解できる。
一方、現Windows 8タブレットは「横位置」が基本だ。Surfaceでのスタンドやキーボードの装着位置、さらにはWindowsキーやインカメラが横位置時で使いやすい位置に配置されていることからもそれが分かるし、Windows 8のModern UIも横置き前提で操作するつくりとなっている。
……ここが市場を多く占める他OS搭載のライバルタブレットとの大きな違いだ。MicrosoftがWindows 8.1で「ポートレートモードの改良」とうたうのは、このあたりの事情をくむものと思われる。
だがWindows 8.1 Previewにおいて、筆者は「具体的にポートレートモードのどの部分が改良されたのか」を実ははっきり認識できなかった。標準アプリを中心に同モードでの表示環境が改善されている可能性もあるのだが、比較用としてWindows 8環境を残してあるSurface RTと8.1 PreviewのIconia W3を比べた限りでは画面レイアウト、そして使い勝手に違いはなかったためだ。
アプリがポートレートモード対応しているかは、アプリ起動時に表示されるスプラッシュスクリーンのアイコンが「縦位置で表示されるか否か」で判別できる。ただ、ひとまず主要・目立つものでこれに対応していなかったのはWindows 8の「Windows Store」アプリ程度で、その他は余白が余分にできるなどの課題こそあるものの、おおむね問題なしだった。
一方、Iconia W3は縦位置での利用を前提とした設計となっている。そのポイントとしては、横位置時に「Windowsキーが右側中央に」、さらに「インカメラは左側に」、そして「リアカメラは向かって左上に」配置されていることから、縦位置で持つことが基本であることを理解できる。専用キーボードドックもキーボード背面のスタンドを立てることで縦位置でもしっかり置けるよう設計されている。これは、これまでのWindowsタブレットにはなかった設計思想と言える。
7型クラスとはいえ、Iconia W3はAtom Zを搭載したWindows 8マシン。当然、従来のWindowsソフトウェアも動作する。対して、Modern UIアプリは画面サイズの制限により、スナップビュー(Snap View)が利用できない。
スナップビューとは、1つのアプリを最小画面サイズで画面の端に小さく表示させ、複数のアプリを1画面で同時に実行させる機能のこと。だが、Windows 8.1はこのスナップビュー機能が廃止され、代わりにUIの最低サイズを横500ドットと規定することで半々に画面を分割できるようになった。これにより1366×768ドットの要件を満たさない機器であっても500ドット(プラスα)×2の画面で分割表示、つまり同時に2つのアプリを同時に実行できるようになる。
もっとも、Iconia W3のディスプレイサイズでデスクトップUI画面を使うのは小さすぎてかなり使いにくいのだが、Modern UIはその限りではない。全画面モード/1アプリのみだったWindows 8と比べると、8.1の画面分割機能のおかげで小画面の機器でもより柔軟性のある使い方が可能になったと言える。
Windows 8.1 Preview+Iconia W3で感じた気になる点は以下の通り。
1つめは意外と盲点。右手で持つと、Twitterのタイムライン閲覧やeBook表示に使うKindeアプリでページめくり動作はできるが、アプリの切り替え(画面の左端から右向きにスワイプ)が行えない。親指が左端に届かないためだ。左手で持つと、今度はチャーム(右端から左向きにスワイプ)が呼び出せない。こちら、iPad/iOS機器であれば中央のホームボタンを2回押し、Android機器も専用のメニューキーがあるので違和感なく操作できるのと比べると、画面端からのタッチ/スワイプを前提とする動作があるWindows 8と相性がいいとはいえない。2つめのソフトウェアキーボードについては、日本語入力がQWERTY配列か手書き入力のいずれかの選択となるために両手持ち前提となる。
3つめは、ポートレートモードにすると違和感のある空白ができる現象が発生するアプリが(現時点)多くあることだ。例えばTwitter公式アプリは、ツイートの作成ウィンドウが画面に大きな空白を作りつつ上部に出現するが、日本語入力時固有のバグなのかカーソルの出現位置に不具合があるため、そのたびに手を大きく動かしてカーソル位置を修正してやらなければいけない。アプリ固有の課題であれば8.1対応のアップデートで修正されると思うが、現時点ではこういったものもかなりあると見受けられる。
4つめはPCからのアクセスかスマートデバイスからのアクセスかを判別し、サーバ側の設定で自動割り振りをしてくれるサイトの利用についてである。こちらはアクセス先の設定によるところが大きいかもしれないが、スマートデバイス、特にタブレットでは余計なことをしないでと感じることがある反面、小さい画面での利用に最適化したデザインで表示されるので重宝することも多いと思う。
Windows 8.1タブレットは、小さい画面の機器でもたいていは普通のPC向けサイトとして扱われてしまう。Windows Phoneなどでも見られた現象で、例えばJavaScriptをオフにすると携帯サイト、オンにするとフルPCサイトになるなどの動きの違いもあったりするのだが、ともあれモバイルOSか否かという判断では現時点、多くのサイトは自動切り替えに対応させていないと思われる。
Windows 8.1の小型タブレットは、各サイトのモバイルIE対応の状況がどうなるかが普及の課題の1つとなりそうだ。またIEにおいても、ユーザーが両者を意図的に分けながら利用できる仕組みの実装が必要になるのかもしれない。
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