一方でWindows Phone(Windows Mobile 10)の日本提供で気になる部分もある。ここで、WinHEC 2015で公開されたWindows Mobile 10のハードウェア構成要件について別の資料を見てみよう。
注目したいのはWindows Mobile 10がサポートする予定の8つのQualcomm製SoCだ。本記事の冒頭で紹介した新規にサポートするSoC(New)以外に、「Windows 10へのアップデートが可能(Updatable)」というカテゴリに3つのSoCが追加されている。これは既存のWindows Phone 8.1で対応しているSoCで、そのままWindows Mobile 10への更新が可能になることを示している。
「MSM8x10」と「MSM8x12」は「Snapdragon 200」に、「MSM8916」は「Snapdragon 410」にそれぞれ該当する。ただし、従来のハイエンドモデルに用いられていたKrait世代のSnapdragonは「Updateable」のカテゴリには入っておらず、この3つのSoC以外はWindows Mobile 10へのアップグレード可否が不明だ。
もっとも、3月27日の発表で上記3種類のSnapdragon以外のプロセッサを搭載したLumiaについても、Windows 10 Technical Previewの提供が表明されている。この資料でアップグレード可能なプロセッサが限定されていることは、一時的な措置なのかもしれない。ただし、対応するプロセッサの範囲についてはLumiaのみが例外という話もあり、Microsoft Mobile以外のメーカーが提供する製品での対応は、今後注視することが必要だ。
また、アップグレード可能なプロセッサが3種類に限定されているというのは、今後日本で提供されるWindows Phone(Windows Mobile 10)端末のスペックを推察することが可能だということも意味している。
例えば2月に、freetelブランドでWindows Phone 8.1搭載スマートフォンの日本投入を発表したプラスワン・マーケティングだが、夏までをめどに「Microsoftとの協議を経て」からWindows Mobile 10へのアップグレード対応を可能にすると表明している。
端末の一部スペックは発表されているが、最終的に搭載されるプロセッサについてプラスワン・マーケティング代表取締役の増田薫氏は「現在調整中の段階」と説明している。Windows Mobile 10はともかく、Windows 10(for PC)は少なくとも7月中に市場投入される予定のため、Windows Phone 8.1状態での市場投入が可能なリミットは2015年6月までだと予想する。
同じくWindows Phone 8.1の状態で市場投入するというマウスコンピューターのスマートフォンもあり、おそらくはfreetelと同時期での市場投入を目標にしていると考えられる。だとすれば3〜4月中には製品の量産体制に入っていなければいけないわけで、この時期に詳細スペックを公に出せないのは何らかの事情があると推察される。
もし前述の形でWindows Phone 8.1からの「Updateable」なプロセッサが限定されていた場合、国内でWindows Phone 8.1端末を投入する事業者は必然的にMSM8916(Snapdragon 410)を選択することになる。日本国内でローエンドのSnapdragon 200シリーズを投入することは考えにくく、そうなるとミドルレンジのSnapdragon 410が最適だからだ。
Qualcommの説明によれば、同プロセッサはクアッドコアで最大1.4GHz駆動のARM Cortex A53と、GPUのAdreno 306を搭載し、4G LTE(Cat4)をサポートする。freetelが現在出しているスペック表を見る限り、同プロセッサを採用しているとみて間違いないだろう。
今年2015年中に日本市場に投入されるWindows Phone(Windows Mobile 10)製品は、ほぼすべて同プロセッサを採用したミドルレンジ製品であり、価格帯も2〜3万円程度のレンジにあると予想する。
国内展開における問題は、販売にあたって携帯キャリアと提携するかという点だ。ハードウェア本体の共通化とソフトウェアのカスタマイズが難しいというWindows Phone(Windows Mobile 10)の制限において、むしろこの販売戦略やサービス面で差異化という部分が、参入メーカー各社の腕の見せ所なのかもしれない。
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