もともとWindows 10 TPがターゲットとしていたのは企業のIT管理者やソフトウェア開発者であり、なるべく開発中のWindows最新バージョンに触れてもらうことで、製品へのフィードバックや事前テストの期間を長く取ることが目的だったと考える。
一方で、Windows 10と連携するであろうMicrosoftのエンタープライズ向けアプリケーション製品やサービス、それ以外の特定用途向けソリューションの話題はこれまであまり出ておらず、一種のブラックボックスとなっていた。
典型的なものがWindows EmbeddedやWindows Embedded Compactと呼ばれる組み込み用途や、いわゆる「IoT(Internet of Things)」と呼ばれる小型機器向けWindowsの最新情報だ。おそらくこの辺りの情報が一気にこのタイミングで出てくるだろう。
一方で、MicrosoftはBuildの翌週にあたる5月4日より米イリノイ州シカゴにおいて「Microsoft Ignite」と呼ばれるパートナー会議を開催する予定であり、先ほど例示したエンタープライズ向けアプリケーション製品やサービスに関する新情報は、BuildよりもこちらのIgniteで出てくることになるとみられる。
Igniteは以前まで「TechEd」と呼ばれていたエンタープライズ向けのパートナー会議であり、SharePointなど製品ごとに特化した複数のカンファレンスを合流させる形でスタートしたまったく新しいイベントだ。
実は米Microsoftのサティア・ナデラCEOはBuildには登壇せず、Ignite初日にあたる5月4日午前9時(CDT:米中央時間)に講演を予定している。Buildの基調講演は登壇予定者がまだ公式ページでアナウンスされていないが、おそらくテリー・マイヤーソン氏やジョー・ベルフィオーレ氏など、Windows開発部門の中心人物らが登壇するとみられる。
その意味では、Microsoftは世間一般的にはBuild〜Igniteの2週間で特に「エンタープライズ向けのメッセージ」を出すことを重視していると考えられる。なお、Igniteも基調講演のストリーミング中継が日本時間の4日23時より公式サイトで視聴できる。
以上を踏まえると、際立った新製品よりも、これまで出てきたトピックのアップデートがBuildでの話題の中心ではないかと考えている。
なお、Microsoftに関して過去にさまざまな最新情報を提供してきた米ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏はBuildの開催に先立ち、いくつか発表内容を予想している。
それによると、ユニバーサルアプリの名称の“リブランディング”やXbox Liveの開発者キット提供、Office 365向けのAPI戦略といったトピックのほか、「AirSpace」と呼ばれるクロスプラットフォーム環境、.NET向けのLLVMコンパイラ「LLIC」など、興味深いキーワードが出ている。際立って目立つものは少ないが、話題は比較的豊富なのかもしれない。
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