PC向けWindows 10に関するハードウェアの最低構成要件も明らかになった。32ビット版の場合、メモリは1Gバイト、ストレージは16Gバイトが必要。64ビット版の場合は、メモリが2Gバイト、ストレージは20Gバイトが求められる。必要ストレージ容量が従来より少なくなっている点に注目したい。
ここでのポイントは2つある。1つが「UEFI 2.3.1 Secure Bootの有効化」で、もう1つが「800×600ピクセル解像度のディスプレイサポート」だ。
デスクトップ版(含むタブレット)Windowsにおけるシステムの最低構成要件。注目は、UEFI 2.3.1 Secure Bootが有効化されていることと、800×600ピクセルのSVGAまでがサポートされていることの2点だUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)は、従来のBIOSに代わりx86(x64)版Windows 8で本格導入されたPCの起動システムで、UEFI 2.2以降では「Secure Boot」と呼ばれる仕組みが導入されている。これはUEFIでPCが起動した後、OSのシステムファイルやドライバを読み込む際にデジタル署名のないソフトウェアの起動を防ぐというものだ。
これにより、例えば悪意のある第三者が不正に改造したソフトウェアを使ってPCシステムを起動させ、システム侵入やデータ取得を試みても、Secure Bootが未然に防いでくれる。このSecure Bootを活用した典型例がARM版Windowsこと「Windows RT」を搭載したSurface(RT)/Surface 2などの製品群だ。これらはWindows RTのみを起動するようにハードウェアがSecure Bootで設定されており、クラッキングなしで他のOSを起動できない。
Windows 8時点でのUEFIにおけるSecure Bootの扱いは、少なくともx86(x64)版Windowsの場合は「オプション」であり、必須ではなかった。ただし前述のスライドのようにWindows 10のハードウェア認定を受けるためには、「Secure Bootをデフォルトで有効」にする必要があり、この点で従来と大きく異なる。
これについては、一部のオープンソースコミュニティで懸念が出ている。例えば米PC Worldでは、この措置により一部LinuxディストリビューションでWindows 10マシンへのLinux導入が難しくなる可能性を指摘している。
UbuntuやFedoraのように比較的メジャーでシェアを獲得している製品では問題ないが、ディストリビューションによっては、Microsoftの発行する認証キーを持っておらず、インストールの際にこのSecure Bootの制限にかかるとみられる。今後ある程度は対策が進むと予想されるが、他OSをWindowsマシンに導入して使っているユーザーは、既知の問題として認識しておくとよいだろう。
もう1つがディスプレイ解像度の部分だ。Windows 8/8.1時代はModern UIアプリが動く最低要件である「1024×768ピクセル(XGA)」がタブレットPCの最低解像度だった。これでも8.1以降に緩和された要件だ。Windows 8時代にMicrosoftからタブレットの認定を受けるためには、少なくとも「1366×768ピクセル」の解像度が必要とされ、これが参入障壁の1つになっていたという背景がある。
条件の緩和後は安価なタブレットも多数登場し、一気に製品バリエーションが広がった。これがさらに「800×600ピクセル(SVGA)」まで下がった背景は不明だが、少なくとも製品バリエーションが増えるきっかけになるだろう。
もう1点注目してほしいのが、ディスプレイサイズの部分だ。「コンシューマー向けには8型以上」「Pro向けには7型以上」であることが求められているが、前者の8型というのはMicrosoftが2015年1月のイベントで発表した「Windows(for PC)とWindows for phones and tabletsを分けるディスプレイサイズの境」に該当する。
2015年1月に発表された「Windows 10 for phones and tablets」の概要。「8型未満のタッチ型デバイス」では、PC版Windows 10ではなく、Windows 10 for phones and tabletsが提供される。Windows 10 for phones and tabletsはいわゆる従来の「デスクトップ画面」や「Windows 7以前のレガシーなWindowsアプリケーション」が動作する環境を持っておらず、Windows 8以降のModern UIアプリや各種UIの互換性をさらに高めたWindows Phone 8.1の後継と考えられるではなぜ「Pro向けでは7型まで許容されるのか」という点だが、ここでいう「Pro向け」が「業務向け」だと考えれば合点がいく。
コンシューマー向けタブレットでディスプレイサイズによるOSの区分けを行うのは、「低価格な小型タブレットと、少し高機能な中型以上のタブレット」で異なるOSを適用して両者を明確に区別するため(Windows for PCがむやみに超低価格PCに適用されないようにするため)と考えられるが、業務用端末ではさまざまなニーズがあり、必ずしもこうしたルールが歓迎されるわけではない。
そこでOSライセンス料が高めに設定されるWindows Proでは、こうしたディスプレイサイズの要件を少し緩和し、業務用端末での普及を促すということだろう。
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