USB 1.x/2.0オリジナルの仕様ではStandard-A/Bで4ピン端子を採用しており、USB 3.0では機能拡張用途としてさらに5ピンが追加されて9ピン端子のコネクタとなった。追加されたピンは主にSuperSpeedの5Gbps伝送を実現するための補助に利用されている。
USB 3.1になると物理層や伝送方式が改良され、「SuperSpeed+」と呼ばれる10Gbpsの伝送速度をサポートし(Gen 2)、Type-Cコネクタが追加された。Type-Cでは12×2=24ピンコネクタとなり、裏表の判別だけでなく、追加された信号ピンを用いての双方向通信や「Alternate Mode」と呼ばれる仕組みの利用が可能になっている。
Alternate Modeは簡単に言えば、Type-Cケーブルを従来のUSBとは異なる用途で利用するための仕組みだ。前述したUSB PDのネゴシエーションのほか、DisplayPortやMHL、さらにはThunderboltやイーサネットといった、USBとは異なるプロトコルや通信ケーブルを用いる規格のデータをデバイス間でやり取りすることを可能にする。これにより、(ディスプレイ側が対応さえしていれば)Type-Cケーブルを使ってPCと直接ディスプレイを接続することが可能になる。
また信号そのものはDisplayPortのプロトコルを使用しているため、ディスプレイ側をDisplayPortのコネクタに変換してやれば、PC側がType-Cコネクタであっても画面出力が問題なく行える。違いはType-Cで本来伝送されるUSBやUSB PDの部分がカットアウトされ、DisplayPortの出力に限定されるかどうかだ。
以上を踏まえて、USB 3.1時代のPCについて少し考えてみよう。MacBookが示すように、Type-Cコネクタの普及した世界では「PCは1つのType-Cポートを持っていればいい」ということが分かるだろう。変換アダプタやPD対応USBハブを駆使することで、あらゆる機器とケーブル1本で接続が可能になる。電源供給もType-Cケーブル経由で行え、周辺機器へのバスパワー供給も変換アダプタ(この場合はPCからの供給)かハブ経由(この場合は電源接続されたPD対応Providerデバイス)で行われる。
タブレットやノートPCの場合、少ないUSBポート数を補うために「ドック」を活用するのが手だ。ドックにType-C経由で電源から周辺機器を接続することで、ドックが一種のUSBハブとして機能する。タブレットやノートPCはドック経由で電源供給を受けることになる。ややトリッキーなのが外部ディスプレイとの接続で、Type-Cに対応していればドック経由も可能かもしれないが、実際には変換アダプタを介してType-C経由でDisplayPortなどに接続する形になるとみられる。
いずれの場合でも、将来的にはドックまたは外部ディスプレイがUSBハブの役割を果たすことになると筆者は予想している。
Type-Cの恩恵を受けるのはスマートフォンも同様で、これまでは難しかった「充電しつつ外部デバイスとのUSB接続」が簡単に行えるようになる。ケーブルの向きを気にする必要もなく、複数のデバイスと簡単に接続できるため、前述のPCドックやUSBハブを介して、本来はPCに接続していたデバイスをスマートフォンからも同時に制御可能になるのだ。
一方で、ドックやUSBハブを活用する以外の選択肢として、Wi-FiやBluetoothによる無線接続も有効だ。「給電できない」「パフォーマンスが安定しにくい」といった問題はあるものの、アップルはMacBookでむしろ「Wi-FiやBluetoothの活用」を推奨しているフシがあり、これはWindows PCにおいても同様だと思われる。
無線LANを活用すればプリンタなどの周辺機器との接続は可能だし、スマートフォンとの接続もクラウドを介して簡単に行える。ディスプレイ出力もMiracastを利用することが可能で、デバイスの発見や接続の仕組みはWindowsが標準で提供しているため、非常に簡単だ。無線通信におけるパフォーマンスの問題についても、(到達距離は短いが)干渉が少ない60GHz帯を活用するIEEE802.11ad(WiGig)の開発が進んでおり、同室内程度なら問題なく利用できるだろう。
いずれにせよ、周辺機器接続や給電のために面倒なケーブルの取り回しや使い分けは必要なく、Type-Cと無線通信の活用でシンプルにまとめることが可能であり、2〜3年後のPC接続事情は大きく変化しているかもしれない。
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