Windows 10の新ブラウザ「Project Spartan」とは何か?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)

» 2015年02月04日 10時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
前のページへ 1|2|3       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Spartanにおける疑問の数々

スマートフォン版のSpartan

 ここからは筆者の予測になるが、レンダリングエンジンを2種類用意し、それを2種類のWebブラウザ(Spartan、IE)のどちらからも呼び出せるようにはなっているものの、実際にはIEはレガシーサポートを主眼に残されたもので、結局多くのユーザーをSpartanを使う方向へと誘導していくのがMicrosoftの目的だと考える。

 Windows 10には「Modern Consumer」「Traditional Consumer」「Traditional Enterprise」の3種類のSKUがあると言われており、このすべてにSpartanが搭載されることになるとみられる。一方でIEについては「Windows 10で利用可能」と言及されているものの、すべてのSKUにまたがって提供されるかは明言されておらず、例えばTraditional Enterprise以外のSKUに搭載されない可能性もある。

 実際、Microsoftでは「一部のエンタープライズ環境でIE専用の古い技術を用いた“レガシーな”Webサイトが存在する」ことを認識しており、これが引き続きIEを提供する理由だとSpartanの紹介文の中で補足している。

 具体的にはActiveXやBrowser Helper Object(BHO)などで、外部プログラムを一種のプラグインとして呼び出す仕組みだ。これらはすでに「過去の技術」として利用が推奨されておらず、特にJava VMやSilverlightの古いバージョンを中心に、実行を中止する仕組みが最新IEには導入されている。IEの存在それ自体が、レガシーサポートのためだけに残されている状況だ。

 Windows 10 TPでは2種類のWebブラウザが両方とも搭載されるとみられるが、実際の製品版で各エディションの構成がどのようになるかは、今後のMicrosoftの情報を待つしかない。

 Spartanが「レンダリングエンジンの分割」や「IEとの区別」を明確にしているのは、今後積極的に新しい技術を取り込んでいくことが狙いだ。それは「注釈機能」などにとどまらず、Chromeブラウザでおなじみの「Extensions」のサポートを表明していることでも明らかだ。

 IE開発チームがTwitterで返答したところによれば、Spartanは今後のアップデートでExtensionsをサポートする計画だという。

 Chrome ExtensionsはHTML/CSS/JavaScriptといったWeb標準を使って作成されたChromeブラウザの拡張機能だが、SpartanもまたWeb標準をベースとした拡張機能を装備し、専用ストアでExtensionsを配布することになるかもしれない。ActiveXなど機種依存性の強いレガシー機能を排除する一方で、Extensionsでその穴を埋めていくのだろう。このExtensionsはSpartan向けの専用機能になると考えられる。

 しかし疑問もある。SpartanはさらにWeb標準化を進め、ライバル製品が搭載して人気だった機能を積極的に取り込みつつ、Modern UI版IEの特徴である「プラグインを排除しての完全なサンドボックス化」を実現しつつあるが、Windows 10以外のプラットフォームへの展開はどうなるのだろうか。

 今後PCリプレースのサイクルを考えれば、少なくとも企業向け環境でのWindows 7/8.1はしばらくは残ることになるだろう。ここで「Windows 7/8.1で(Spartanの)Cortana機能は使えるのか?」「Extensionsの旧環境でのサポートは?」という疑問は当然出てくる。Spartanを旧環境でも望むユーザーはいるはずだ。

 ただし「既存のWindows 7/8.1ユーザーは、Windows 10発売後1年間は無償で同OSへのアップグレードが可能」というオファーをMicrosoftが行っている以上、旧環境へのこれ以上の手厚いサポートは望むべくもないかもしれない。

 ちなみに、Microsoftによれば、この1年間無償アップグレード対象となるのはコンシューマユーザーのみで、Enterprise版ユーザーは対象外となり、ソフトウェア・アシュアランス(SA)の範囲でのアップグレードが可能としている。

 むしろ問題となるのは「Windows以外のプラットフォームへのSpartanの展開」だ。現在のWindowsのシェアを考えれば、デスクトップPC環境でMac OS XやLinux向けにSpartanを出すメリットは少ないかもしれない。

 一方、スマートフォンや軽量タブレットでのシェアが低いモバイル向けでは、Windowsのプレゼンスを高める効果も考えられる。現状ではiPhone向けのサイトをWindows Phone上で再現するためのWebKit拡張がIEに施されているほどだ。こうした特定プラットフォームに偏った状況を緩和する効果が期待される。


「鈴木淳也の「Windowsフロントライン」」バックナンバー


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月11日 更新
  1. 初のカラー対応「Kindle Scribe Colorsoft」の実力は? 通常モデルとの価格差1万7000円の価値を検証 (2026年06月10日)
  2. 「Geminiの技術は使うが、Geminiではない」 WWDC26で見えたApple流AIとプライバシー戦略の核心 (2026年06月10日)
  3. ミニPCに強みの「MINISFORUM」 ミニワークステーションの新モデルから「謎の拡張カード」まで多彩な製品を披露 (2026年06月10日)
  4. 「macOS 27 Golden Gate」が2026年秋に登場 初のApple Silicon専用バージョンに (2026年06月09日)
  5. 「次世代Apple Intelligence」をフル活用するにはどのような条件がある? 「Siri AI」は日本で使える? 知っておくべき対応モデルのハードル (2026年06月09日)
  6. コンパクトボディーにスパコン並みのAI性能! 「NVIDIA RTX Spark」搭載ミニデスクトップPCを見てきた (2026年06月04日)
  7. 実売1万円切りでパススルー給電にも対応! KTCの15.6型モバイルディスプレイ「H15F9」は“買い”か (2026年06月09日)
  8. LGが4K有機EL TVの2026年モデルを発表 映像プロセッサを刷新し120Hz以上の高速表示にも対応 (2026年06月09日)
  9. 夜間もフルカラーで鮮明に記録できる「SwitchBot 屋外パンチルトカメラ 5MP」が15%オフの7674円に (2026年06月10日)
  10. 高騰中のSSD、品薄のHDD──けれど“最終処分”のニーズは変わらず (2026年06月06日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー